iSCSI対応ネットワークストレージ「TeraStation IS」の魅力(1/2 ページ)
バッファローからiSCSI対応ストレージ「TeraStation IS」が登場した。従来、企業のサーバ用外付けストレージにはディスクアレイが用いられてきたが、これは100万円を超える高価なもの。低価格なTeraStation ISによって、ハイパフォーマンスで信頼性の高い環境を手軽に実現できるようになる。
帯に短し、たすきに長し――増設HDDの憂うつ
大容量の保存領域を求められるサーバ用の外付けのストレージには、一般的にディスクアレイが用いられてきた。RAIDコントローラを内蔵し、複数のHDDを収納してホスト側からは1台のドライブとして見えるディスクアレイは、SCSIやファイバーチャネルで接続し、ローカルドライブと同等以上のパフォーマンスと信頼性を提供する。しかし、ディスクアレイの価格帯は100万円以上が当たり前の世界であり、エンタープライズ向け以外での利用はあまりない。
だが、現在サーバを取り巻く需要と価格のバランスは大きく変化しつつある。ローエンドからミドルレンジのCPUを採用したサーバは、最小構成で数万円というものもめずらしくない。もちろん、大規模なエンタープライズ用途には荷が重いものの、部門サーバなど限られた人数での利用では十分利用可能だ。しかし、部門サーバと言えども、取り扱うデータ量はますます増大しており、数百Gバイト〜数Tバイトのストレージは必要になっている。部門内で共有するデータの重要性を考慮すると、当然ながらバックアップは必要不可欠だが、部門サーバとしてバックアップに利用できる機器のコストは限られる。少なくとも、サーバ自体の価格をはるかに上回るディスクアレイやテープドライブではコストバランスが取れず、予算上導入が難しいことは確実だろう。
もちろん、デスクトップPCと同じくUSB接続のHDDを利用することも可能だが、サーバ用途では信頼性の高いRAID 1あるいはRAID 5が必須とも言え、安価な外付けHDDではなく、RAID機能を搭載した製品が必要になる。一方、ネットワークを利用してNASを導入するという選択肢もあるが、NASは本来、複数のクライアントからの利用を考慮しているため、1台のホストから利用するにはオーバヘッドが大きい。
このように、増設ストレージは、高信頼性、高可用性、高パフォーマンスではあるが非常に高価なものと、安価だが低パフォーマンスなものの両極端しかないというのが現状だった。そこに登場したのがバッファローのiSCSI対応HDD「TS-I1.0TGL/R5」だ。
iSCSI対応のメリットは?
iSCSIはTCP/IP上でSCSIプロトコルをカプセル化したもの。つまり、接続形態としては一般的なLANアダプタ、LANケーブルを使用する。TCP/IPネットワークであるから、当然ルータやハブなどの一般的なネットワーク機器を介することも可能だ。
これだけではNASと変わりないように思えるかもしれない。しかし、NASがネットワーク上のファイル共有プロトコルを使用するのに対し、iSCSIのプロトコルはあくまでもローカル接続用のSCSIがベースになっており、ホストからはローカルドライブとして見える。そのため、複数のマシンから同一ボリュームを共有することはできないものの、リクエストの調停などを行う必要がなく、パフォーマンスを上げやすいというメリットがある。
それでは、増設用外付けHDDとして見た場合はどうだろうか。iSCSIと同程度に簡単に接続できる外付け用インタフェースにはUSB 2.0があるが、転送速度の理論値は480Mbps。一方、iSCSIで使用するTCP/IPは、ギガビットLAN(1000BASE-T)環境であれば2倍強の1Gbpsだ。一般的なUSB外付けHDDの実効転送速度が、USB 2.0上の通信がボトルネックとなって軒並み30Mバイト/秒で頭打ちになっていることを考えると、SCSIプロトコルのカプセル化によるオーバヘッドを考慮しても、より高速なレスポンスが期待できる。
なお、iSCSIのドライブ自体はいままでも存在していた。しかし、ファイバーチャネルの置き換えとして位置付けられていたiSCSI対応製品は、価格的にも100万円を超える製品がほとんどだった。今回登場したバッファローのTeraStation ISは、14万円という低価格でiSCSIに対応した初の製品だ。TeraStationシリーズで培った堅牢性、ブラウザのみの簡単設定、柔軟なRAID構成はそのままに、NAS機能をiSCSIに置き換えている。
最も簡単なiSCSIの導入方法
TeraStation ISの設定は、TeraStationシリーズ同様、ブラウザから行う。運用にあたってまず初めに決めなければならないのがRAID構成だ。TeraStation ISには4台のHDDが搭載されており、それぞれ別のドライブとして使用する通常モードと、4種類のRAIDモードが選択できる。
サポートしているRAIDは、ストライピングを行うRAID 0、ミラーリングを行うRAID 1、パリティによるデータ保護を行うRAID 5、RAID 1とRAID 0を組み合わせたRAID 10の4種類だ。目的に応じて選択すればよいが、通常はRAID 5かRAID 10のどちらかになるだろう。
RAID 5は障害時にデータが復旧できるよう、データとともにパリティを分散記録するものだ。3台以上のHDDで構成され、そのうち1台分の容量がパリティに使用されるため、実際にデータ領域として利用できるのは、全ディスク台数から1台分を引いた容量になる。TeraStation ISの場合は4台で構築するため、ディスクの使用効率は75%になる。
一方、RAID 10は高速性に優れたRAID 0と耐障害性に優れたRAID 1を組み合わせたもので、ミラーリングを行うRAID 1を複数セット用意し、それをRAID 0でストライピングする。分散書き込み、読み出しを行いつつ、常にミラーリングがなされるため、耐障害性、高速性ともに優れている。ただし、HDDの使用効率は50%になる。
次にクライアントPCの準備を行う。先に述べた通り、iSCSIはTCP/IPネットワークを利用するため、クライアントPCに必要なハードウェアは、一般的なLANアダプタのみ。特殊なアダプタやコントローラは必要ない。もちろん、無線LANも利用可能だ。一方、iSCSIを利用するためのソフトウェアとしては、SCSIのホストアダプタに相当するiSCSIイニシエータが必要になる。マイクロソフトによるiSCSIイニシエータの正式サポートは2003年6月からなので、それ以降に発表された「Windows Vista」や「Windows Server 2008」には標準搭載されているが、それ以前の「Windows XP」や「Windows Server 2003」で利用する場合はマイクロソフトのダウンロードセンターからインストールする。
iSCSIイニシエータの設定は、TeraStation ISに付属している「iSCSIハードディスク接続ツール」を使用して行うが、コントロールパネルのiSCSIイニシエータ(iSCSI Initiator)からも行える。探索(Discovery)タブのターゲットポータル(Target Portals)にTeraStation ISのIPアドレス、もしくはホスト名を追加すると、ターゲット(Targets)タブにTeraStation ISが公開しているボリュームが表示される。ここでログオン(Log on)をクリックすれば接続できるので、あとはローカルディスクを追加したときと同様、コンピュータの管理からディスクをフォーマットし、ドライブに割り当てて利用すればよい。
ちなみに、Windows XPやWindows Server 2003では、英語版のiSCSIイニシエータしか用意されていないため、ややハードルが高いと感じる人がいるかもしれない。上で挙げた一連の処理は、「iSCSIハードディスク接続ツール」なら数クリック程度で完了できるので、通常利用ではこちらを使用すればよいだろう。
提供:株式会社バッファロー
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年3月31日
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