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「iPhone 2.0」で何が変わるのか?WWDC'08基調講演まとめ(前編)(2/4 ページ)

WWDCの詳報として基調講演の内容をもう一度振り返る。まずは「iPhone 2.0」の詳細から見ていこう。

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iPhone 2.0はSDK対応

iPhoneでは、この4つのAPIが基礎になっている

 企業情報システムの話に続いて、Platform Experience担当の副社長、スコット・フォースタール氏が登壇し、iPhone開発者の状況について語った。

 フォースタル氏は、壇上にあがるとまず、アップルが提供するSDK(ソフトウェア開発キット)が「アップルがiPhone用アプリケーションの開発に使っているのとまったく同じもの」である点を強調した。iPhoneのAPIは、Core OS、Core Services、Media、Cocoa Touchの4つが基本となっている。

 Core OSはMac OS Xとほぼ同等のOS基盤技術、Core Servicesには充実したデータベース系APIや位置情報を扱うCore LocationなどのAPIが用意されている。Mediaには、音の定位も指定できるオーディオフレームワークのOpenALや、ユーザーインタフェースに楽しい動きを加えてくれるCore Animation、そしてハードウェアアクセラレータを使って快適にリアルタイムの3Dグラフィックスを操るOpenGL ESなどが用意されている。そしてCocoaTouchには、iPhoneをiPhoneたらしめているタッチインタフェースのための機能が詰まっている。

フォスタール氏は数分でアプリケーションを開発してみせた

 開発者たちは、こうしたリッチなAPIを開発基盤とし、プログラムコードを書いたり、デバッグするためのXcode、ユーザーインタフェースを設計し、プログラムとつなげるInterface Builder、開発したソフトウェアの実行をMac上で試せるiPhone Simulator、実際のiPhoneでの動作の状況をMacの側から監視できるTethered Debugging機能、そしてアプリケーションの動作を最適化するInstrumentsといったツールを活用してアプリケーションを作る。

フォースタル氏は、iPhoneの住所録から半径10マイルにいる人の住所を抜き出して一覧表示するアプリケーションを、簡単なドラッグ&ドロップ操作の繰り返しだけで、ほんの数分(しかも解説をしながら)で作ってみせた。デモのあとフォースタル氏は、実際にiPhone 2.0のSDKを使って開発をした大企業やメディアの人の言葉を紹介し、その中に冒頭で紹介したDavid Pogue氏の言葉も出てきた。

11社がアプリケーション開発の体験を語る

Super Monkeyball

 SDKの簡単な説明の後に続いて、32分間におよぶデモが始まる。1番目に登場したのがSEGAだ。同社のはモーションセンサを使って本体を傾けながらプレイする「スーパーモンキーボール」を披露した。

 同社のEthan Einhorn氏によれば、このゲームは3月のSDK発表時にも紹介されたが、その時にはSDKを手に入れてから2週間で4ステージを移植した段階だった。その後、8週間経って110のステージと4つのプレイキャラクターのすべての移植を完了したという。

 ゲームのラストステージでは、加速や減速など、かなり細やかな操作が必要とされているが、iPhoneのモーションセンサはそうした細かな動きを見事に認識してくれるのだという。同ソフトはApp Storeにて9.99ドルで発売される。

 2番目は8400万人が利用するオークションサイトを提供するeBayだ。同社のKen Sun氏に、よればiPhoneは、すでにeBayへのアクセス件数が最も多いデバイスになっている。同社はこうしたユーザーがより快適にオークションを行えるように専用のアプリケーションを開発した。このアプリケーションはApp Storeから無料で提供される。

 3番目は、looptのSam Altman氏は、iPhoneのCore Location APIを使って、自分の周囲にいる友達を表示してくれるアプリケーションを紹介。利用者は自分の居場所についてコメントを残したり、友達にメッセージを残したりできるという。

 Altman氏は「これまでは終わってから、実は友達が近くのレストランにいたということが分かったりした」「looptを使えば2度とさびしく一人で食事をすることはなくなる」と語った。このソフトはApp Storeにて無料で配布される。

eBay(写真=左)とloopt(写真=右)

 4番目はSix Apartのブログサービス「TypePad」のクライアントソフトだ。同社のMichael Sippy氏は、TypePadは同社で最も人気があるブログサービスで、日々1億人がTypePadで作られたブログを閲覧していると語る。このTypePadで人気があるのが、写真を投稿するフォトブロッギング機能だ。iPhoneのTypePadアプリケーションでは、内蔵カメラで撮影した写真を簡単に投稿できるようになる。このアプリケーションもApp Storeから、無料で提供される。

 5番目はニュース配信会社のAssociated Press。同社はすでにiPhone用に最も優れたWebアプリケーションを提供しているが、今回これを「Mobile News Network」という名前で、ネイティブアプリケーション化し、さらに高度なサービスを提供するようになった。

 同社のBenjamin Mosse氏は、「iPhoneは数千のニュース媒体から入ってくる情報を、より多くの人々に届ける触媒」だと語る。

 同アプリケーションでは、自分の現在地を指定すると、その近くのニュースソースから送られてきたニュースを一覧表示する機能、iPhone上にAP社のきれいなニュース写真を表示する機能、動画のニュースクリップを再生する機能、それと同時に事件の現場などからニュース記事や写真を送るための機能も用意されている。

 Mosse氏は、このアプリケーションがわずか数週間で開発できたことを紹介、すでにほかにもいくつかすばららしいアイディアがあり、その実現に向かっていると語る。Mobile News Networkは、App Storeから無料で提供される。

Six Apart(写真=左)とAssociated Press(写真=右)

 6番目はMacのゲーム開発社としておなじみのPangea Softwareだ。同社はなんと2つのゲームを開発し、紹介した。1つ目はしたたる水を反射させて遊ぶパズルゲームの「Enigmo」。50レベルある。同社のBrian Greenstone氏によれば、2面以降では毎フレームごとに1000以上の(水滴の)衝突シミュレーションを行わなければならず、これにはかなりのCPU処理能力が必要とされるが、iPhoneではそれができるのだという。

 もう1つのゲームは「Cro-Mag Rally」原始時代を舞台にしたカーレースゲームだが、ゲーム機(iPhone)本体がそのままハンドル代わりにもなるというのは、まったく新しい新鮮な体験だという。iPhoneのSDKは本当によくできていて、モーションセンサーを使ったハンドルさばきの部分のプログラミングも、5〜10分ほどですぐに完成したという。両ソフトともApp Storeにて9.99ドルで提供予定だ。

Enigmo(写真=左)とCro-Mag Rally(写真=右)

 7番目はMoo Cow MusicのMark Terry氏。本業は英国の証券会社で働くエンジニアだが、余暇でiPhoneを楽器に変えてしまう音楽ソフト「The Band」を開発した。2オクターブのピアノやドラムセット、簡単な指使いでブルースを演奏するインタフェースや、ベースギターなどを紹介、これ以外にも楽器があるという。演奏の様子は記録も可能だ。「The Band」は数週間以内にApp Storeで販売予定だ(価格は不明)。

The Band

 8番目はMLB.com、大リーグの公式Webサイトだ。アプリケーションを起動すると、今日の試合の一覧が表示される。その1つを選ぶとスコアなどがリアルタイムで表示され、さらにゲームのハイライトシーンを実際の試合の数分後には動画で見ることができる。同アプリケーションも、すぐにApp Storeで提供予定だと言う(価格は不明)。

MODALITY

 9番目はMODALITY。医療教育用のアプリケーションだ。3月のSDK発表時に「Epocrates」という薬剤系アプリケーションのデモをしたところ、医療分野でもiPhoneが話題になり、今後、医療機関の関係者で12カ月以内に携帯電話を買おうとしている人たちの3分の1がiPhoneを筆頭候補にあげているという。

 MODALITYのCEO、S.Mark Williams博士は「これまで医学生は体内の部位の名前や位置を覚えるのに、紙のカードを使って暗記をしていたが、iPhoneとこのアプリケーションを使えば、もっと簡単に学ぶことができる」と語る。

 アプリケーションでは特定の部位をズーム表示したり、クイズを出したりできる。同氏は、「生徒が常に持ち歩きたいと思っているデバイス上に学習教材をのせることができるのはすばららしいこと」として、学生の1人が、「カフェラテを待っているあいだに脳内の部位を5つも覚えることができた」という逸話も紹介した。

 同社はApp Storeのサービス開始から数週間以内に12種類のアプリケーションを用意し、年末までにさらに多くのアプリケーションを発売すると公約した(価格は不明)。

MIMvista

 10番目はMIMvista。やはり医療用のアプリケーションで、PET ScanやCT Scanのデータを表示するアプリケーションだ。1本指操作で輪切り画像を切り替えたり、2本指操作で着色パターンを変えたりと、画像データーを自由自在に操ることができる。

 同社のCTO、Mark Cain氏は、iPhoneの登場までこうした医療用の画像データをモバイル機器で見ることなど誰も考えもしなかった」と語る。

 同社はSDKを手にしてから1週間でこのプロトタイプを作り、アプリケーションの方向性を決め、その後3週間でアプリケーションを完成。開発エンジニアは「iPhone SDKが、自分のアイディアをどんどん形に変えてくれる」と感嘆していたという。

 同アプリケーションでは、1本指操作、2本指操作、ピンチのほか、本体を振って書き込んだ情報を消すなど、マルチタッチの操作も積極的に取り入れている。

 Cain氏は、このアプリケーションは、医師が患者に画像を見せるツールとしても有望だと語る。「我々はまだこの可能性の表面をかすっただけに過ぎない」と同氏は言う。なお、提供時期や価格は不明だ。

KRULL

 そして11番目、トリを飾ったのはスペインの開発者、Digital Legends Entertainmentだ。同社がSDKを手にしたのは、わずか2週間前のこと。CEOのXavier Corrillo Costa氏が同社のファンタジー・アクション・アドベンチャーゲーム「KRULL」を移植するのにかかった時間はわずか4日間で、その後はiPhoneならではの機能を盛り込むのに時間を費やしていたという(キャラクターの操作は、画面のタッチや本体を振ったり、傾けたりして行う)。

 Costa氏は、App Storeが自社のコンテンツの世界展開を可能にする唯一の手段として注目している、と語った。ゲームは9月までに発売する予定。

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