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もう知らないと乗り遅れる? 「VR(Virtual Reality)」の基礎知識Oculus Rift、PlayStation VR、HTC Vive……(2/3 ページ)

2016年は「VR元年」となりそうです。VRって何? 何がスゴイの? なぜ今話題なの? これからどうなるの? そんな素朴な疑問にVRアプリ開発者が答えます。

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なぜ今VRが話題なのか――Oculus Riftの衝撃を受け、他社も追従

 2014年になると、HMDの情勢は激しく変化します。Oculus Rift以外にも「VRのために作られたHMD」が続々と登場してきたのです。

 特筆すべきは、ソニー・コンピュータエンタテインメントの参入でしょう。同社は2014年4月、PlayStation 4(以下PS4)用のVR対応HMD「Project Morpheus」を発表しました。その存在は2013年後半からうわさされていましたが、世界で3500万台以上(2016年1月実績)売れている家庭用ゲーム機の周辺機器としてVR対応HMDを投入するということで、VRが一般家庭へ急速に普及する期待が高まりました。

 2015年9月、Project Morpheusの製品名は「PlayStation VR」になることが発表されました。現在は2016年上期の発売予定に向けて、ハードウェアとソフトウェアの両方で開発が進められています。

Project Morpheus
PlayStation 4用のVR対応HMDは、Project Morpheusこと「PlayStation VR」。画面解像度は1920×1080(片目960×1080)、パネルは有機EL、リフレッシュレートは120Hz対応というスペックです

 米Googleは、よりユーザーに身近なアプローチからVR対応を始めました。2014年6月に開催した年次開発者会議のGoogle I/O 2014にて、ダンボールを折り畳み、スマートフォンを差し込むだけで作れる簡易的なVR対応HMD「Cardboard」(英語におけるダンボールのこと)を発表し、参加者全員に配ったのです。これとともに、カジュアルユーザー向けにYouTubeやGoogleストリートビューなどをVRに対応させました。

 CardboardはオープンソースのHMDとして仕様が公開されており、複数のメーカーが組み立て式の互換製品を安価(税込1000円程度から)に販売しています。

Cardboard
開発者会議のGoogle I/O 2014にて発表された「Cardboard」。ダンボールを折り畳み、スマートフォンを差し込むだけで作れる簡易的なVR対応HMDです

 Oculus VRも大きな動きを迎えます。米Facebookは2014年3月に同社を20億ドルで買収すると発表し、このニュースは世間を騒がせるとともに、VR対応HMDの将来性を再認識させられる出来事となりました(2014年7月には買収完了)。

 Facebookによる買収で注目を集めるOculus VRは2014年7月、第2世代のアプリ開発者向けキット「Development Kit 2(DK2)」の出荷を開始します。1920×1080の有機ELパネルを採用したことで、画面が粗くて液晶の残像が見えていた第1世代よりも画質と遅延が大幅に改善され、VRの体験レベルがさらに向上しました。

 さらに、外部赤外線カメラとHMD本体の赤外線LEDが追加されたことで、頭の位置を取得できる「ポジショナルトラッキング」が搭載されたことに注目です。これにより、HMDをかぶった人が上下前後左右に頭を動かすと、VR内でもカメラが上下前後左右に動くようになりました(同様の仕組みはPlayStation VRでもPlayStation CameraとカラーLEDを使って実現されています)。

Oculus DK2
Oculus Riftの第2世代開発キット(DK2)は350米ドルでした。画面解像度は1920×1080(片目960×1080)、パネルは有機EL、リフレッシュレートは75Hz対応というスペックに強化されました

 2015年3月には、スマートフォンメーカーの台湾HTCが、世界最大級のゲームダウンロード販売プラットフォームであるSteamを運営するValveと提携し、「HTC Vive」というVR対応HMDを発表しました。ValveのVR技術「SteamVR」を採用していることが特徴で、世界のゲーム市場に影響力のあるSteamとのタッグによる差異化を図っています。2016年1月には第2世代の開発キット「Vive Pre」が発表されました。

 これ以降は、Oculus Rift、PlayStation VR、HTC Viveの三大陣営として、VR対応HMD製品が扱われるようになります。

HTC Vive
「HTC Vive」は「SteamVR」対応が最大の特徴です。SteamVRの無線ベースステーションと、両手に持つコントローラーが付属します。HMDは画面解像度が2160×1200(片目1080×1200)、パネルが有機EL、リフレッシュレートが90Hz対応とハイスペックです

 また、Oculus VRは韓国Samsungと提携し、PC用のOculus RiftだけではなくSamsung製スマートフォン専用のはめ込み型HMDである「Gear VR」も2014年から開発し、2015年末に一般製品として発売しています。

 Gear VRはOculus Riftと違ってポジショナルトラッキングはありませんが、専用のセンサーやタッチパッドを搭載しているため、Cardboardよりも性能が高く、しかもPCとケーブルをつなぐ必要がないので、ワイヤレスで快適に利用できるという利点があります。

 Samsungのスマートフォンは日本市場より海外で幅広く売れており、企業別の海外シェアはAppleを抜きトップメーカーとなっているため、そのフラッグシップモデルに対応したGear VRには潜在的なユーザーが数多く存在します。

Gear VR
Samsungの「Gear VR」。「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」をはめ込んで利用する簡易的なVR対応HMDとなっています。HMD本体に加速度センサー、ジャイロセンサー、近接センサーを備えているので、Cardboardよりも高性能です

 このように、1人1台になりつつあるスマートフォンを利用した簡易的なVR対応HMDと、より高性能なPCやPS4を用いたリッチなVR対応HMDが、どちらも出そろいつつあるのが2016年初頭現在の状況です。

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