マルチで圧倒、Intelに互角以上の性能を備えた「Ryzen 9 3900X」「Ryzen 7 3700X」をテスト:夏の自作特集(1/3 ページ)
AMDから、開発コード名Naviの新GPU「Radeon RX 5700」シリーズとともに、Zen 2アーキテクチャを採用した次世代CPUとなる第3世代Ryzenが発売された。今回は、AMDの評価キットを入手し、Ryzen 9 3900XおよびRyzen 7 3700Xをテストした。
AMDの第3世代Ryzenでは、CPUダイの製造に7nmプロセスが採用された。これは同時に発表される新GPU「Radeon RX 5700」シリーズも同様で、7nmプロセスにかけて7月7日にリリースが決まったのもこうした理由からだそうだ。
第3世代Ryzenの主なスペック | ||||||
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CPU | Ryzen 9 | Ryzen 7 | Ryzen 5 | |||
モデルナンバー | 3950X | 3900X | 3800X | 3700X | 3600X | 3600 |
コア数 | 16 | 12 | 8 | 6 | ||
スレッド数 | 32 | 24 | 16 | 12 | ||
定格クロック | 3.5GHz | 3.8GHz | 3.9GHz | 3.6GHz | 3.8GHz | 3.6GHz |
ブーストクロック | 4.7GHz | 4.6GHz | 4.5GHz | 4.4GHz | 4.4GHz | 4.2GHz |
ゲームキャッシュ | 72MB | 70MB | 36MB | 36MB | 35MB | 35MB |
PCI Expresss | Gen 4.0 | |||||
TDP | 105W | 65W | 95W | 65W | ||
価格(日本円) | 未発表 | 5万9800円 | 4万6980円 | 3万9800円 | 2万9800円 | 2万3980円 |
価格(USD) | 749ドル | 499ドル | 399ドル | 329ドル | 249ドル | 199ドル |
発売日 | 2019年9月 | 7月7日 |
第3世代Ryzenのアドバンテージ
第3世代Ryzenでは、CPUパッケージ内の構造ががらりと変わる。従来はCPUダイが1つ格納されていただけだが、第3世代Ryzenからはチップレット(Chiplet)構造を採用し、I/Oダイを中心にCPUダイが上位のCPUでは2つ接続される。1つのCPUダイが最大8コア16スレッドで、2つのダイを搭載したRyzen 9 3950Xが16コア32スレッド対応となる。他はCPUダイの数、CPUダイ上のいくつのコアを有効化/無効化するのかのバリエーションだ。
I/OダイはPCI Express(以下PCIe) Gen4をサポートしている。現在主流であるPCIe Gen3の倍の帯域を実現する次世代インターフェースだ。その上で、I/Oダイの帯域は豊富だ。PCIeグラフィックスカード用のx16レーンはもちろん、チップセット側との接続もPCIe Gen4 x4が確保され、ストレージ用のPCIe Gen4 x4もあり計24レーンとなる。加えてUSB(10Gbps)用にも毎秒5GBの帯域が確保される。
特にCPU直結のストレージは、高速化するM.2 NVMe SSD用として重要な意味を持つ。チップセット側に接続されたM.2 NVMe SSDは、チップセット−CPU間の帯域に依存することに加え、チップセット側に接続されたSATA HDDやUSB、その他の機器にも帯域を奪われるので、全ての帯域を利用できるわけではないためだ。PCIe Gen3ではなくGen4、そしてCPU直結という2つのアドバンテージで、ストレージの高速化を実現している。
ゲームキャッシュというキーワードは新しいが、これはL2+L3キャッシュを意味している。例えばRyzen 9 3900Xの場合はL2が6MB、L3が64MBで計70MBとなる。同様にRyzen 5 3600の場合はL2が3MB、L3は32MBという計算だ。それにしても、Intel Core i9-9900KのL2が2MB、L3が16MBだから、第3世代Ryzenはかなり大容量化したといえる。ゲームキャッシュと名付けたのは、この増量が主にゲームで有効だからとのことだ。
第3世代Ryzenは、引き続きSocket AM4が採用されている。そのため、従来のAMD 300シリーズチップセット、同400シリーズチップセットでも利用できる上に、新たにAMD X570が用意される。
既存のチップセットを搭載するマザーボードについては、マザーボードメーカーが対応BIOSをリリースするかどうかに関わっている。ただ、あまり古いものやVRM設計が古いものについては対応BIOSのリリースが難しいかもしれない。400シリーズチップセットでも、対応BIOS更新済みのマザーボードが登場しているので、X570にこだわらなければそれらでもよい。
一方でPCIe Gen4がサポートされるのは、基本的にAMD X570のみだ。AMD X570搭載マザーボードは、より高クロックとなったPCIe Gen4用に設計されている。その分高価であり、現時点ではプレミア向けマザーボードという位置付けになる。また、PCIe Gen4以外にもいくつかの機能は旧チップセットでサポートされないので注意が必要だ。
現状、PCIe Gen4対応グラフィックスカードは同時リリースが予定されているRadeon RX 5700シリーズのみだ。PCIe Gen4対応SSDはいくつかのメーカーからリリースされたが、比較的高値でそもそもコントローラチップが1つなためそこまで選択肢が豊富とはいえない。まだしばらくの間は、PCIe Gen3が主流の時代が続く。既存ユーザーの方は今のプラットフォームで対応できるならばそれがベストだろう。もちろん、今すぐ最新の全機能を試したい方は、AMD X570マザーボードを購入すべきだ。
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