ゲームよりもクリエイター向き? 夢が広がる「第3世代 Ryzen Threadripper」の実力(1/5 ページ)
優れたパフォーマンスから2019年のベストセラーCPUとなった、AMDの第3世代Ryzen。それと同じZen2アーキテクチャで構築されたエンスージアスト向けCPUが、第3世代Ryzen Threadripperだ。その実力はいかほどのものか、試してみよう。
去年(2019年)の話になるが、AMDから第3世代の「Ryzen Threadripper」がリリースされた。
Ryzenといえば、第3世代で「Zen2アーキテクチャ」を導入したことでパフォーマンスが向上。2019年のヒットCPUとなったことは記憶に新しい。そのZen2アーキテクチャが、いよいよエンスージアスト(極限性能を求める用途)向けCPUにも到来したことになる。
その実力はいかほどのものか。記事執筆時点で発売済みの「Ryzen Threadripper 3960X」(税込み実売価格18万〜20万円)と「Ryzen Threadripper 3970X」(同25万〜28万円)のパワーを、Ryzenプロセッサの最上位に相当する「Ryzen 9 3950X」(同10万〜11万円)と比較しつつチェックしていく。
「16コア32スレッド」では満足できないクリエイターのためのCPU
第3世代Threadripperはいったいどのような用途に向けた製品なのか。筆者が参加した説明会での話を聞く限りは、以前のようなゲーミングエンスージアスト向けではなく、基本的にワークステーション向けのCPUとして訴求したいという意思が見え隠れする。
確かに、Socket AM4を用いるデスクトップ向けRyzenプロセッサが、Ryzen 9 3950Xで16コア32スレッドに“到達”してしまい、ゲームに実況配信に……といった、多コア多スレッドを要求するような用途に対応できるようになっている。
コア数が増えると、消費電力や発熱の都合から動作クロック(周波数)は控え目になる傾向にある。ゲームではクロックが重要になることが多いことを考えると、「ちょうどいいコア数で、できるだけ高クロック」となれば、第3世代Threadripperよりも第3世代Ryzenの方がゲーミング用途には“適任”ともいえる。
一方で、動画のソフトウェアエンコードや音楽制作といったCPU負荷の高い作業も行うとなると、コアがもっと必要になる。まあ、ここまでやるとゲーマーの枠を超えて「クリエイター」になるのだろうけれども……。
ともかく、第3世代Threadripperはゲーマーの枠を超えてクリエイターと呼べるようなユーザー向けのCPUということになるだろう。
ソケットが「sTRX4」に変わった第3世代Theradripper
さて、第3世代Threadripperのラインアップだが、記事掲載時点では先述の通り3960Xと3970Xがリリース済みで、2月7日に発売される最上位の「Ryzen Threadripper 3990X」と合わせて3製品となる。
コアとスレッドの数は、3960Xが24コア48スレッド、3970Xが32コア64スレッド、そして3990Xが64コア128スレッドとなる。3970Xと3990Xの間に「3980X」があってもおかしくないが、仮に出るとしたら48コア96スレッドあたりになるだろう。
CPUの構造としては、複数のCCX(Core Complex:CPUコアとCPUキャッシュを統合したモジュール)を、外部との入出力を担う「I/Oダイ」で結ぶようになっている。このこと自体は、Zen2アーキテクチャのCPUで共通だが、I/Oダイの部分が第3世代Ryzenと異なる構造を取っているようだ。
また、第3世代Threadripperとでは、チップセットが「AMD TRX40」に、CPUソケットが「Socket sTRX4」に変更されている。つまり、AMD X399チップセットを用いている従来のThredripper用マザーボードは流用できない。
従来世代のThreadripperから乗り換える場合は、プラットフォームの総入れ換えが必要だ。この点、コストの高い移行になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.