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iPhone 14/Apple Watch/AirPods Proの共通項 シンプル、パーソナル、そして安心安全Apple秋の新製品(2/3 ページ)

Apple恒例となる秋のスペシャルイベントが開催された。「超えよう。」をテーマに発表された新製品はどのようなものだったのか。林信行氏がレポートする。

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使われないことを祈って開発された新機能

 製品に複雑さを加えない新機能、最近、多いもう1つのパターンが「可能ならば使われないのが理想」の安心機能の追加というパターンだ。今回、その事例として新iPhoneやApple Watchシリーズに追加されたのが、車の衝突検知の機能だ。日々、世界中で起きている車の衝突による交通事故。

 それを体験した人はマイノリティーかもしれないが、あなたの身に起こらないとは言い切れない。そんな時、例えあなたが運転手でなく、タクシーや家族の車の後部座席に乗っているだけだとしても、事故の大きな衝撃があると、この機能が自動的に起動し、あなたの安否を確認する。

 あなたが意識不明で応答がなければ、自動的に救急電話をかけて、あなたの位置情報や事故があったことを代わりに伝えてくれるという機能だ。

 この機能が搭載される前から、Apple Watchなどを使って毎年多くの人が命を救われてきたが、今回、発表されたiPhoneとApple Watchの全製品は、車の衝突によって生じる最大200Gほどの衝撃を大きく上回る256Gまで検知することができるセンサーを新たに開発し、あなたが忘れているところで、あなたの身を守ってくれる。

 Appleは自動車メーカーがよく行うダミー人形を積んだ車を衝突させる実験を繰り返し、この機能を開発したという。なかなか、全ての携帯電話メーカーができる開発方法ではない。

Apple Watchが大きな衝撃などを検知すると、緊急連絡を促す画面が自動的に表示される
Apple Watchが大きな衝撃などを検知すると、緊急連絡を促す画面が自動的に表示される

 実はもう1つ「使われない方が良い」安心機能がある。

 まずは米国とカナダで11月から始まる「衛星通信でSOS」という機能だ。電波がない場所で、遭難などをしても自分の今いる場所や、どれくらいの時間耐えられそうかといった情報を衛星通信を使って連絡する技術だ。

 これまでは、巨大な専用の衛星電話を持ち歩かなければ利用できなかった衛星通信の機能が、あの薄いiPhoneの中に収められている。通話ができるわけではないが、文字を使って遭難した場所や、残りの食糧などの情報を救命隊に伝えられる。

 Appleはこの機能のために、過去の遭難者やその救助でどのような情報が役立ったかを徹底的にリサーチし、簡単に送ることができる定型文などの書式をいくつか用意した。また全ての救命隊がテキストによる連絡を受け取れるとは限らないので、新たに受信した救命情報を読んで、電話で救命隊に連絡をする部隊を用意した。安心のための新たなインフラをデザインし、新たに事業部を設けているのだ。

米国とカナダで11月から提供される「衛星通信でSOS」機能。iPhone 14シリーズを画面の指示に従って通信衛星に向けると、定型メッセージが表示され、まさかの緊急時でも救出の手助けをしてくれる
米国とカナダで11月から提供される「衛星通信でSOS」機能。iPhone 14シリーズを画面の指示に従って通信衛星に向けると、定型メッセージが表示され、まさかの緊急時でも救出の手助けをしてくれる

 SIMスロット廃止も衛星通信も、とりあえずは米国のみ(衛星通信はカナダでも)での提供だが、多くの人が「おそらく日本では無理だろう」と諦めていたApple Watchの心電図機能が、今日使えているように、いずれパートナー企業や政府を説得して日本でも提供されるはずだと期待したい。一海外企業がそう思っているのと同様に、日本のパートナー企業や政府にも、国民一人一人の安心安全を強く願う心があって欲しいと切に思う。

 こういった安心安全にもつながるもう1つの重要な変更が、バッテリー動作時間の改善だろう。

 ここまで紹介してきたのはiPhone 14シリーズ共通の特徴だが、製品の構成についても触れておかなければならない。

 今回、AppleはiPhone SEという製品があることを受けてか、小型のminiシリーズをやめて、その代わりほぼPro MaxシリーズのiPhoneと同じ大画面を持つiPhone 14 Plusをラインアップに加えた。1画面により多くの情報を表示したり、より大きな文字表示で利用したりといったことが可能になる。

スマホの常識を更新するiPhone 14 Pro/Pro Maxシリーズ

 そしてProシリーズは、さらにもう一歩、未来へスマホを前進させている。

 15年前に最初のiPhoneが発表された時から、スマートフォンは節電のために使っていない間は画面を消すのが当たり前になっていたが、iPhone 14 Pro/14 Pro Max(以下、Proシリーズ)では、画面が常時ついたままだ。

 使っていない間は、画面が少し暗くなり、画面の更新が1秒に10回程度にまで落ちるが、ロック画面に表示される時計や最新のiOS 16でロック画面に追加される、さまざまな情報表示(ウィジェット)はほぼリアルタイムで更新され、タッチしてiPhoneをスリープ状態から解除すると同時に、詳細情報を表示させることができる。

 それでいてバッテリー動作もほぼ丸1日使える仕様(ビデオ再生で最長23〜29時間)になっている。

 同じ有機ELディスプレイが、晴天時の画面の明るさは従来の2倍になり、より見やすくなっている点も見逃せない。

 それに負けないくらい進化したのがカメラだ。撮れる写真の画質については、実機を使ったレビューで紹介するのがベストなので、ここでは割愛するが、頑なに同じ解像度を保ちながら、その上で画質向上を続けてきたAppleが、ここへきて画素数を一気に4倍の4800万画素に向上させた。これにより、例えば遠くにあり小さく写っている被写体でも写真をトリミングすることで、より大きく鮮明に見せることができる。これを応用して、望遠撮影に写真の一部を切り出した2倍モードが加わった。

 そしてAppleのデザインチームのすごさを実感させてくれるのが「Dynamic Island」だ。画面の大型化によって誕生したノッチと呼ばれる画面上の黒い影(ここに赤外線カメラや自撮り用のカメラなどが隠されている)。このネガティブな要素を、iPhone上で複数のアプリをスマートに同時利用するための操作方法へと昇華させてしまった。まさに逆転の発想だ。

 例えば音楽の再生中に、再生画面を画面の上の方にスワイプアップすると、再生画面がこの「Dynamic Island」に吸い込まれ、再生中のアルバムジャケットや音量の変化のアニメーションを表示してくれる。曲をスキップしたくなったら、この黒い部分をタッチすると、画面上部に小さな再生コントローラーが表示されるので、そこをタップして曲送りを行える。

 同様にタイマーを使って時間を測っているときも、スワイプアップ操作でDynamic Island上に縮小表示することが可能だ。

 百聞は一見にしかずなので、まだな人は是非とも動画でその動作を確認してほしい。

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