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1日中会社に引きこもっていると、帰るころには靴がきつくなっている。前々からこれをどうにかできないかと思っていた。ある時、そんな切なる悩みを解消してくれるというアイテムを見つけた。イトーキのオフィスチェア「Cassico」(カシコ)だ。
女性向けに作られたというこの製品は、なんでもむくみを軽減し、姿勢を補正してくれるという。早速イトーキのショールームを訪ね、その座り心地を確かめてみた。
今回対応してくれたのは、イトーキの商品開発部デザイナーの秋山かおりさん。秋山さんは、Cassicoの商品開発から販売戦略まで広く関わっている、Cassicoの産みの親的存在だ。
Cassicoは5年の月日をかけて誕生したという。「女性へのヒアリングをしっかり行って作りました。販売までに紆余曲折がありました」と秋山さん。むくみ防止だけでなく何かとこだわりがありそうだ。
「Cassicoってどういう意味ですか?」――とりあえず名前の由来を聞いてみた。
Cassicoの由来は手紙の文末に書く“かしこ”。「言葉の女性らしさと、人の名前のようで愛着が持てるということで名付けられました」(秋山さん)。
イトーキでは、近年女性の働く人口が増えてきたことから、人間工学的な観点から女性特有の疲れ方について慶応義塾大学の山崎信寿教授と共同で研究していた。これがCassicoの開発につながったのだという。「男性と女性では疲れ方などが違うということが、いろいろ見えてきました」(秋山さん)。
研究を続けていく中で、男性と女性ではそもそも体格が違うのに、みんな同じイスに座っているという点に疑問を持った。また厚生労働省や総務省の調べで、女性の働く人数の増加と比例して、女性の事務従業者数も年々増え、全体の約60%を女性が占めていることも分かった。
「1日座り続けているということは、人が生活する中で体によくないことなので、オフィスチェアの開発はそのストレスをどう軽減させてあげるためにはどうしたらいいかということを考えます」と秋山さん。
まず男性と女性では骨格の形状が違う。男性よりも女性の骨盤の方がより幅が広く、また横から見ると男性が平らなのに比べて、女性は骨盤の下に若干厚みがあるのだという。そこに注目しCassicoは、女性の骨盤の形状に合わせて、イスの座面をすり鉢状にへこませ、女性が長時間座っても疲れにくいように設計されている。
筋肉の量も付き方も、女性と男性では大きな差がある。背筋力で比較してみると、女性の背筋力は男性のおよそ半分。「これまでイスは、後傾姿勢をサポートするタイプが主流でした。しかし、女性の中にはきちんとした姿勢を取ろうとして背もたれを利用しない方も多く、腹筋力の弱い女性が腰を痛めてしまう原因でもありました。Cassicoは、あまり大きく後方に傾斜させずにきちんとしたした姿勢をサポートできることが特徴です」(秋山さん)。
また通常、イスの背もたれは体格のいい男性にも対応できるように反力が大きくかかっていて、女性の力では初期設定で倒すことができない場合もある。大体のイスに強弱調整が付いているものの、調整する人はなかなかいないのが現状と秋山さんは説明する。Cassicoはこの調整が外され、初期設定で女性でも使用しやすい状態。背もたれに楽に寄りかかれた。後傾角度は6度までとされ、角度に合わせて腰の支えも変化させており、傾斜が浅くてもリラックスできる仕組みになっている。
Cassicoの最大の特徴は「サーキュレートシート」と呼ばれるイトーキオリジナルの座面。座面中央部から先が下に倒れる。これだけのことだが、太ももの裏の圧迫を和らげ、足のむくみを軽減させるのだという。
筋肉の付き方が違えば、当然男女で疲れる部位も異なる。「男性の場合ふくらはぎに筋肉があるので、重力によってたまってしまった血液を上体に運ぶ力がある。逆に女性は戻しにくいためむくみやすい。また、女性の場合スカートをはきますので、むくんでることを気にされたり、むくみのひどい方では夕方靴を履き替えた際にブーツのチャックがあがらないだとか。それをどうにかしてサポートしてあげたかった」(秋山さん)。
長時間試していないので効果のほどは分からないが、確かに座面の先を下に倒すことで足下にゆとりが生まれる感覚があった。慶応義塾大学との実験では、従来のイスに比べ40%むくみが減少するという結果となったのだそうだ。
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