DTPは死ぬのか? 新世代DTP推進4社の思惑と寒風吹く業界の今後を占う“TNG”プロジェクト(2/2)次に利益を享受するのは、アップルだろう。Macをこよなく愛し(ているかどうかは断言しないが)、Macを買い続けるそれなりに巨大なバーティカル市場が他に存在するだろうか? いやない。このDTP市場が、Mac OS Xへの切り換え、ひいては新型Macの購入を手控えている。QuarkXPressのMac OS X対応のあまりの遅延と、手に馴染んだ道具を切り替える際の職人特有の壁だ。 米国主導で世界的に映像と音楽系への注力を行っているアップルジャパンとしては、DTP市場がいつMac OS Xへと移行してくれるのか、やきもきしていても不思議ではないだろう。 アップル同様程度の利益を得る可能性を持っているのがモリサワだ。Mac OS 9でしか動かないOCFフォントからNEW CIDフォントへの有償交換期限を、同社は2003年5月に設定した。不景気による業界のシュリンクと、ツールベンダーの売り上げは、無縁ではないのである。OpenTypeへの買い替えは望むところだろう。 この3社と比べると、大日本スクリーン製造にはそれほどのメリットがあるとは思えない。何といっても“Windows DTP”を推進していたのは、誰であろう、大日本スクリーン製造である(無論、今でもソリューションとしてしっかり存在する)。少なくとも他の3社との協同は意義深いものではあるだろうが。 願わくは、かつて存在した「パブリッシャーズ・フロント」にならないようにと思う。かつて存在したマルチメディア業界の中の勢いある6社が合同で始めたプロジェクトだったが、マルチメディアCD-ROM業界のシュリンク(縮小)の動きを止めることはできなかった。幾つかの会社は時代とともに幕を下ろし、幾つかは業態変更によって今日も精力的な活動を続けている。
![]() 左よりアップルコンピュータ プロダクトマーケティング課長 櫻場浩氏、アドビシステムズ クリエイティブプロフェッショナル部 サービスプロバイダーマネージャー 百合智夫氏、大日本SCREEN製造 マーケティング部事業企画課長 高田敏和氏氏、モリサワ 営業二部長 中村信昭氏
今回4社のインタビューを行った際、「これは象徴です」という言葉を得た。元気のない業界をチアアップし、未来を拓くための象徴だそうだ。このプロジェクトもそうだが、この4社が共同で何かを行う、ということ自体にインパクトがあるのは事実だ。米国や欧州などでOSメーカー、ソフトメーカー、フォントメーカー、ソリューションベンダーがそろってプロジェクトを行うなど、寡聞にして聞いたことはない。 確かに、象徴は必要だ。DTP関連業界でメシを食っている人たちの未来に少しでも思いを馳せるなら(自分も端くれの端くれとして)、未来への希望は必要だからだ。TNGとしてのブランディングも進めていくとのことで、頑張ってほしいと思う。 無論、企業の目的は利益を出すことにある。この4社の思惑を否定したり、意味のない嫌悪感を抱くことは、もしあなたが業界人であれば、あなた自身の否定になってしまうだろう。 思うに、確かに不況が周囲を覆っているのは間違いないが、単に今までのことを続けていけば、どんな産業であっても斜陽化するのはあたりまえのことだ。Web制作、ムービー、ドキュメント管理、システムインテグレーション……。業態を拡大するべき選択肢はさまざまあるし、既に実践している会社もまた、多数存在する。 そして“モダン”なツールを使用したソリューションのほうが、業態拡大に最適なのは、言うまでもないことだろう。悪い言い方をするのを許していただければ、“QuarkXPressしかできない、実力の無い職人”と心中するな、ということだ。もちろんQuarkXPressは良いソフトだ。現時点では未来が不透明、というだけで。 DTPは死ぬのか? 単純に言えば、あと四半世紀もたたないうちに、DTPだけなら最終的には巨大なメディアワークフローの一部分でしかなくなるのだろう。それだけでは、現在業界として雇用している人口を養えるとは思えない。これは、紙の雑誌編集者からWebメディア編集者へと転身した筆者だから言う極論ではない。 いみじくも語られる「デジタル革命」のある程度の終着点として、それは確実に来るはずである。その時に個々人がどのようなデジタルツールをもって、やりがいのある仕事をすることができるだろうか? 今回の4社プロジェクト“TNG”は、時代の転換点の大きな“象徴”だと思う。 関連リンク[大出裕之, ITmedia ] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. 前のページ | 2/2 | 最初のページ モバイルショップ
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