> レビュー 2003年5月28日 11:59 PM 更新

汎用DSLRの頂点に君臨する――エポックメイキングな1台
キヤノン EOS 10D(1/3)

製品写真
総合評価8
デザイン8
ユーザーインタフェース9
機能8
性能8
バッテリ5
ソフト4
レンズ9
レイティングポリシー

評価のポイント

デザイン

     オリジナルとして専用設計された質感の高いボディ。所有する者に喜びを与えてくれるデザインだ。開発コストは相当かかっているはずだが、その割に本体価格は安い。メーカーとこのブランドの力がもたらす“スケールメリット”がなせる技だろう。この芸当を真似できる光学系メーカーは、今のところ見当たらない。グリップのホールド感はD60から厚みを増し、さらに持ちやすいものになった。

ユーザーインタフェース

     操作系は、前身のD30、D60の流れを汲むものであり、これらのユーザーなら違和感なく乗り換えられる。ボタンの配置や形状を細かく見直した後継機として、操作性の向上に余念がない。とりわけISO感度がメニュー内の格納から、ドライブモード選択との兼用ボタンを押しながらサブ電子ダイヤルを回すことで設定できるようになった点は評価したい。EOS-1系の高級機ユーザーからすれば、操作系に違和感を唱える向きもあろうが、10Dは汎用機である。ここは別物と割り切って、操作性の統一といった過度な期待は持たないように。

機能

     7点測距のAFが多くの場で絶賛される10Dだが、私はあまり評価していない。もちろんD60に比較すれば雲泥の差で目を見張る飛躍だが、元のレベルが低過ぎたのだ。D1クラスでない限り、私はMF路線を貫く。むしろ機能面ではダイレクトプリントのほうを支持したい。私は長年お世話になったエプソンからキヤノンに乗り換えてしまった(専用ケーブルでカメラとプリンタをつなぐ)。画質に自信がなければ、PCを介在させないプリントを声高に奨励できるものではない。

性能

     発売当初、10Dが作る色味のあっさり加減が大きく話題になった。10Dの色彩設計は確かにナチュラルだ。彩度の高い色作りをするカメラに慣れた感覚からすると、物足りなさを感じるかもしれない。しかし記憶色重視に偏りがちな世の傾向に異議を唱えるかのような、確たる姿勢に、私は単純に感動した。ボディは比較的小さく軽いのでスナップに向くだろう。作品撮りにも必要十分の画質を備えている。オールマイティな撮影シーンに使い回せるはずだ。個人的には旅行に最適だと思う(持って出かけることが、おっくうにならない)。

バッテリ

     これは本文で詳細に書いたので記述を控える。強いて言えば、本体同梱の専用バッテリ1つで足りるユーザーなら、充電のノウハウを賢く身に付けよう。リチウムだからといって、安心して継ぎ足しを繰り返していると痛い目に遭う。やはり充電前には放電。これが肝要なのだ。その充電器だが、D60のものから大幅にスリム化したので助かる。この恩恵はありがたく受けよう。ためらわず、持ち歩くべし。

ソフト

     一般的な画像処理ツールに熟達した人は、キヤノン純正ブラウザの操作性には我慢できないだろう。同梱のRAW展開ソフトも同様である。いずれもユーザビリティーが悪いうえに処理速度が遅い。致命的に救いがない。このことは10Dユーザーを苦しめている。1D、1DsならばPhotoshopのPlug-inソフトである現像ソフト、Camera RAWを選択すればよいからだ。ところが10Dはこれに対応していない。しかし、逃げ道がないわけではない。ネット上でググれば(Googleで検索すれば)、貴重な情報に出会えるはずだ。

レンズ

     10Dと同時発表されたL玉、EF 17-40mm F4L USMの評判がすこぶる良い。私はブースで試写したことがある程度で、今回のレビューでは試す機会に恵まれなかった。私のお気に入り、EF 16−35mm F2.8L USMを上回る絵もシチュエーションによっては撮影可能のようだ。これは心中穏やかでいられない。EF 16-35mm F2.8L USMよりはるかに安いのだから。5月下旬発売予定で価格は12万円。

     とにかくキヤノンのレンズラインナップは、過剰供給といえるほど揃いまくりである。焦点距離が肉薄したズームがいくつもあって、迷える子羊は今日も増えるばかり。

総合評価

 なんだかんだ言っても「すごいぞ、キヤノン!」である。DSLR入門機と呼ぶにはあまりにも立派な、ツッコミを入れにくいオーラを放つカメラである。撮影シーンの幅を広げてくれるISO感度拡張機能、色温度を100Kステップで設定できるWB(ホワイトバランス)機能など、D60から変更された細かなリファインは数えきれない。630万画素CMOSの画素数値はD60同様なのだが、解像感が大きく異なる。階調が豊かなのでトーンカーブ調整による虫食いデータ化率が少ない。このコシの強さは実際に体感していただく他はない感覚的な要素も含まれる。偽色の軽減技法もさらに腕を上げたし、AWB(オートホワイトバランス)も優秀な出来映えだし、安定感のある“結果”を出してくれる1台である。

ベンダー製品担当者からの一言

 ハイアマチュアを主な対象とし、クラスを超えた高機能とコストパフォーマンスを両立したデジタルAF一眼レフカメラ。約630万画素の大型CMOSセンサーと映像エンジン「DIGIC」により、従来以上の高精細・高画質・自然な色合いを実現しています。(キヤノン販売 広報部 徳重義弘)

主要スペック

撮像素子CMOSセンサー(22.7×15.1mm)
有効画素数630万画素
対応レンズキヤノンEFレンズ群
感度(ISO)オート/ISO100−1600相当
焦点調節オート/マニュアル
最高品質時の最大画像解像度(W×H)3072×2048ピクセル
シャッタースピード1/4000−30秒
記憶メディアコンパクトフラッシュカード
画像ファイル形式JPEG、RAW
PC用インタフェースUSB
サイズ(W×D×H)149.7×75×107.5ミリ
重量790グラム(本体のみ)

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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