> レビュー 2003年5月28日 11:59 PM 更新

汎用DSLRの頂点に君臨する――エポックメイキングな1台
キヤノン EOS 10D(3/3)


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 一般的な画像処理ツールに熟達した人は、キヤノン純正ブラウザの操作性には我慢できないだろう。同梱のRAW展開ソフトも同様である。いずれもユーザビリティーが悪いうえに処理速度が遅い。致命的に救いがない。このことは10Dユーザーを苦しめている。1D、1DsならばPhotoshopのPlug-inソフトである現像ソフト、Camera RAWを選択すればよいからだ。ところが10Dはこれに対応していない。しかし、逃げ道がないわけではない。ネット上でググれば(Googleで検索すれば)、貴重な情報に出会えるはずだ。

 10Dと同時発表されたL玉、EF 17-40mm F4L USMの評判がすこぶる良い。私はブースで試写したことがある程度で、今回のレビューでは試す機会に恵まれなかった。私のお気に入り、EF 16-35mm F2.8L USMを上回る絵もシチュエーションによっては撮影可能のようだ。これは心中穏やかではいられない。EF 16-35mm F2.8L USMよりはるかに安いのだから。5月下旬発売予定で価格は12万円。

 とにかくキヤノンのレンズ・ラインアップは、過剰供給と言えるほど揃いまくりである。焦点距離が肉薄したズームがいくつもあって、迷える子羊は今日も増えるばかり。

EOSユーザーの聖地的BBSは読むべし

 EOS Digital BBSの書き込みを読んでいる10Dユーザーはご存じと思うが、データ書き込みの2段式バッファは、シャッター半押しで書き込みを中断してしまう。こうしたあたりにも、10Dをコンシューマー向けのデジタル一眼レフとして割り切って使用する必要があることを痛感させられる。ちなみにコントロール系統が2段構成になっている1Dや1Dsでは、このような症例は出ない。

 ホワイトバランスについて申し上げておくと、AWBの再現力はきわめて自然だと思う。これは上位機種の1Ds、1Dと比較しても優秀だと断言する。

 端的にわかるのが夕方時の撮影。赤味が補正され過ぎずに、実にイイ感じだ。1Dは補正が効きすぎてシアン寄りになる傾向を感じることがある。1DsのAWBは、1Dと10Dの間といったところか。

 アドビ システムズのCamera RAWが10Dに対応していないことにブーイングするユーザーは数知れない。Camera RAW標準搭載のPhotoshop 8.0の登場が待たれる。しかし10DのJPEGラージ・ファイン(最高画質モード)は非常にコシがあって、「RAWモードはいらないかも」とさえ思わせる画像を生成してくれる。ただ、シャープネス(輪郭強調)はやや強い傾向を感じるが。

10Dのベストバイレンズは

 最後に、これは10Dユーザーに限らない話だと思うが、「ボディの購入で一杯いっぱい。Lレンズを数本揃えるなど、預金通帳の残高が許さない」という実情が大半なのではないだろうか。では、たった1本付けるとしたら……。これさえあれば、とりあえず当面困ることは少なそう。そんな視点でEF 16-35mm F2.8L USMを使ってみることにした。

 とにかく明るい。単焦点と変わらない気軽さで持ち歩ける。10Dに合わせるレンズとしてはベストバイだと確信する。なぜかというと、AFの速度&精度が(D60に比して)飛躍的に向上した、とされる10Dだが、MFにしたくなることがしばしば。三脚で使用時は間違いなくMFだ。こういう場合、レンズに「フルタイムMF」機能が付いていてくれると非常に助かる。そうした操作性の面でも、この「イチロクサンゴー」はうれしいのだ。

 5月下旬発売のEF 17-40mm F4L USMが登場するまでは、ベストバイレンズだが、その先は前言撤回するかもしれない。また機会があればご報告したい。

EOS-10D:作例

 このページの画像はWeb掲載用に加工してあります。リンクをクリックすると、手を加えていないオリジナルの画像を見ることができます。

  • 作例01「東京駅」


<撮影データ>使用レンズ:EF 16-35mm F2.8L USM、絞り優先AE(F8、1/180秒)、EV補正+1/2、ISO感度:200、WB:くもり(オリジナル画像はこちら

 極端なシャドー部とハイライト部が混在した、コントラストの激しい過酷な条件。主役はあくまでも東京駅の駅舎なので、ISO感度は200。400や800は選ばなかった。10Dにベストマッチ賞を授与したいイチロクサンゴーで焦点距離を35mmに。つまりほとんど標準50mm並みの画角である。絞りF8で、ほぼパンフォーカスになった1枚。

 この10D、およびイチロクサンゴー。じつは私の私物であり、腰のあるレンジ幅にとても満足している。もしかしたら、このような作例は10Dの得意分野なのではないか、とさえ思う。

  • 作例02「フェラーリ01」


<撮影データ>使用レンズ:EF 16-35mm F2.8L USM、絞り優先AE(F8、1/10秒)、EV補正+1/2、ISO感度:400、WB:くもり(オリジナル画像はこちら

 イタリアン・スピリチュアルを感じさせるエンツォ氏の情熱の赤をどのように再現してくれるのか。パシャリと写した結果はご覧の通り。「彩度控えめの10Dのエクステンションツールなのでは?」と思わせる、鮮やかな色作り。

 焦点距離は16mmとしており、画像の端まで絵が流れていない。テールランプ周辺のエンジン部カバーの網形状にもモアレは見られなかった。イチロクサンゴーを選んでよかった、と小さな感動を覚えた。

  • 作例03「フェラーリ02」


<撮影データ>使用レンズ:EF 16-35mm F2.8L USM、絞り優先AE(F8、1/20秒)、EV補正+1/2、ISO感度:400、WB:くもり(オリジナル画像はこちら

 これは機能テストとしての撮影である。エンジン部カバーの網形状にモアレが出ないか、近寄って撮影してみた。結果はご覧の通り。一点の偽色も見られないし、ボディ塗装表面部の質感まで伝わってくる。「やっぱり写真は広角だよ」。どこかの写真家が語った名言だが、広角レンズは楽しい。そして単焦点にこだわっていた私だが、このズームなら大歓迎だ。持ち歩いていて“万能”の安心感がある。

  • 作例04「ジーンズ」(RAWファイル)


<撮影データ>使用レンズ:EF 135mm F2L USM、絞り優先AE(F2、1/8秒)、EV補正なし、ISO感度:100、WB:電球(オリジナル画像はこちらからダウンロードしてください)

 ジーンズのインディゴブルーの発色。そしてラルフローレンのベルトのエンボス具合。白熱灯の光源下で、電球モードにした。ホワイトバランスはどんぴしゃりのビンゴである。低速度。マニュアルフォーカスにて。

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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