技術へのこだわり
dynabookに見る“コダワリ”のモノ作り(2/3)

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温度と空気の流れる方向、流速確認の例


内部構造の目視確認のために作られるスケルトンモデル(写真はdynabook SS 3500)。実際に使用するパーツから型取りしてプラスチックで作る

 東芝の解析ツールは、空気の流れ、温度上昇、応力に対する変形、衝撃への耐性などについて、高い精度でのシミュレーションが行えるという。「シミュレーション段階で、問題のほとんどを発見することが可能。例えば液晶パネルを接続するフレキシブル基板の耐久性などは、実試験前にあらかじめ対策することができる」。

 さらに解析担当者は、作業を依頼した製品設計担当者に結果を通知するだけではなく、どのようにして解決すべきか、分析担当者の立場で進言する体制を整えているという。例えば基準内の温度上昇に留まっている場合でも、高温部が偏っている場合には熱を拡散させることを提案したり、冷却ファンの負荷が高い場合に改善を進言するといった形で、設計担当とコラボレーションを行い、問題の早期解決を図る。

 素材分析部門も同様だ。はんだ処理の品質評価、プラスティックの成形ムラ、電子顕微鏡による破壊部位の分析など、さまざまな視点での分析を行い、設計担当に対して直接的なアドバイスを送る。

 通常、こうした素材分析作業は別途配備されている研究部門、あるいは研究所などに依頼する形を取る。東芝にもそうした部署はもちろん存在するが、製品開発の現場でも各種分析を行えるようにすることで、経験や勘に頼らず科学的なアプローチにより製品の質を直接的に高めることが可能な体制を取る。

 このほかにも、青梅事業所には驚くほど多くの設備がある。製品から発する電波の計測、あるいは電磁波に対する耐性を検査する電波暗室は3棟備え、常にフル稼働状態でトライを繰り返す。騒音特性を計測する半無響室、そして数々のテスト装置だ。

 「青梅事業所はPCの開発、設計、試験、製造を行うだけでなく、ハードディスクや携帯電話も同様の手法で作っている。製造ラインから開発、分析、解析までをトータルで、1つの施設で行えるメリットは計り知れない。開発サイクルのスピードアップ、品質向上などを通じ、都内に位置する工場でありながら、高い競争力を維持することが可能になった」。


(左)実装開発センター・実装開発第三担当主務の大岡敏樹氏(部品技術担当)、(右)実装開発センター・実装開発第三担当 溝呂木薫氏(分析技術担当)


PC設計第一部・第六担当の渡辺玄氏(互換性・性能評価担当)

dynabookの“当たり前”を最新のフォームファクタに

 かつての東芝製PCのアドバンテージは、自社製チップセットに自社製BIOS、自社製ハードディスクなど、インハウスで持つ豊富なPC関連技術を集大成させた最新ハードウェア技術にあった。しかし現在、PCのコンポーネントは汎用製品の採用が進み、ほとんどの製品がインテル製チップセットを採用している。これは他社も同じであり、PCベンダーとしての特色を出しにくい。

 言い換えれば、PC製品の基盤とも言えるチップセットを他社に依存している形だが、可能な限り自社でチップセットを開発していた頃と同等の品質を実現する努力を行っているという。たとえばチップセット関連では、インテルと毎週1回の定期会議を行い、チップセットの開発初期段階からチップセットのバグ出しや品質向上で協力体制を敷いている。

 「インテルはこの部分には抵抗を入れてくれ、ここにはコンデンサと、回路設計に対して細かなサポートを行う。多くのベンダーは、インテルの指示する回路設計をその通り行うだろうが、我々はなぜそのような設計が必用なのか、インテルのリファレンスデザインよりも実装面積や消費電力などを抑える回路デザインが可能ではないかという疑問を提示するところから仕事が始まる」

 つまり、回路デザインを行う場合にも、一手間かけてインテルと協業し、品質や性能を向上させるステップを踏むことで、自社技術で固めていたかつてのdynabookと同等レベルの品質を維持しているわけだ。「我々はインテルから見ると、いちいち文句をつけるいやなPCベンダーなのかもしれない」と担当者は笑うが、そうした関係をインテルと築くことができたのも、東芝の的確なフィードバックが少なからずインテルの製品品質の向上に寄与しているからだろう。

 dynabookと言えば、回路設計や採用コンポーネントの先進性だけでなく、筐体の丈夫さ、故障頻度の低さでも知られている。そして最近はデザインにもこだわる。特にdynabook SSシリーズは、最薄部15ミリを切る薄型筐体を実現しているだけに、以前の無骨だったdynabookほどの強靱さを備えていないのでは? といぶかしむ読者もいることだろう。

[本田雅一, ITmedia ]

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