> レビュー 2003年10月8日 11:23 PM 更新

ペンタックスが「*ist D」でついにデジ一眼に参入。その実力のほどは?(2/3)


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 シャープ感についても基本的にゆるやかな設計を感じさせる。今回のレビューに使用したレンズは、諸条件の制約があって広角ズームの「FA J18mmF4〜35mmF5.6AL」のみである。一眼レフカメラの画質の決め手はレンズなので、1本だけでカメラのすべてを断じることはできない。だが、露出を絞り込んだ風景写真なのに「どこにピンが合っているのかな?」と感じることがあり、パキッとした絵柄を好むユーザーには抵抗があるかもしれない。「シャープネスや色はあとで補正するから」と悠然と構えられる、RAWで撮影するのが前提のプロ&ハイアマに向いたカメラかもしれない。万人ウケのするわかりやすい絵を作るカメラではないので、やや敷居は高いと言えるだろう。

 *ist Dの話題として避けて通れないのがハイパー操作系と称されるメーカー独特の機能だ。これは次の2機能を指している。

ハイパープログラム

 モードダイヤルを普段「P」(プログラムオート)にセットしているユーザー向けの機能だ。「P」から「AV」(絞り優先)や「TV」(シャッター速度優先)へ露出を瞬時に切り替えられる。プログラムオートはカメラ任せの撮影モードであり、プロやハイアマのフォトグラファーが日常的にこのモードで撮っているとは考えにくい。つまり多くのプロやハイアマには縁遠い機能と考えられる。このカメラは前述の通り、カメラ任せで撮る入門機ではないため、筆者にはミスマッチな機能と感じた。

ハイパーマニュアル

 モードダイヤルを普段「M」(マニュアル)にセットしているユーザー向けの機能だ。マニュアル撮影時にハイパー操作系ボタン(グリーンのボタン)を押すと、その時の適正露出値に自動的にセットされるというペンタックスの「即応の思想」である。これも筆者には機能の需要を推し量ることはできなかったが、愛用、常用するユーザーもきっといるのだろう。

細部にはツメの甘さも

 背面の十字キーは、小さくて使いづらいように感じた。十字キーを押そうとしてOKボタンを押し間違えてしまうのだ。大きな手の人なら、より高い頻度でOKボタンを押してしまうことだろう。しかしこれは慣れの問題としておこう。この優れたコンパクトボディに大きな操作キーが付いているのもアンバランスなので、これはこれで良しとしたい。


背面の十字キーは、*ist Dのコンパクトなボディにはマッチしているが、小さくて押し間違えることもしばしば

 十字キーより問題と感じたのは、コンパクトフラッシュカードのスロット部である。これは評価機だけの問題かもしれないが、折りたたみ式の取り出しピンをグッと押し込んでも、メモリーカードのせり上がりが不十分で取り出しにくいのである。頻繁にカードの出し入れを重ねるプロやハイアマユーザーの立場からすると、恒常的なストレスにつながりかねない。

 シャッター音は個人的には好ましいメカニカル音なのだが、野山で小鳥を追うには適していない。街角でスナップを撮るのにも目立ってしまうと思われる。

 電源は、単3型電池(リチウム電池、アルカリ電池、ニッケル水素充電池)×4またはCR-V3×2である。

 *ist Dを海外に持って行くのなら、バッテリーはCR-V3を使用したい。カタログ数値はノンストロボで1000枚となっているが、たしかにそのくらいは撮影可能だろう。レビュー中にかなりの枚数を撮影したが、バッテリーの減りは少なく、省エネ設計を感じた。ちなみに、単3型リチウム電池のカタログ数値はノンストロボで900枚、ニッケル水素充電池は450枚である。アルカリ電池は110枚しか撮れないが、万一の場合(旅先に充電器を忘れたとか)の保険として使えるのはありがたい。

 *ist Dは、同時期に発売されたキヤノンの「EOS Kiss Digital」と競合するような入門機ではない。価格的にも初級者には手が出しにくいし、万人ウケのするわかりやすい絵を作るカメラではないからだ。

 *ist Dは、RAWデータ専用機としての用途がもっとも適しているのかもしれない。撮影後の現像処理に十分な時間を割けるプロやハイアマ、あるいは優れた工業デザイン製品を求めるホビイストなどがコアなターゲットになるだろう。

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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