> コラム 2003年11月17日 12:06 PM 更新

嗜好品的PCは僕の中で成り立つか(1/2)

X505の「価格」「デザイン」「薄さ」「軽さ」は、これすべて「持つ喜びを満足させる」ためにある。では「使う喜び」はどれだけ満足させてもらえるのだろうか。

 新バイオノート505「PCG-X505」は先週12日の発表と同時に各種媒体で一斉に、かつ詳しく紹介され大きな反響を巻き起こしている。筆者に届くメールを見ていると、今のところ価格とスペックを見比べて「否定的な意見」が多いようだ。ところが、手に触れて見た人の感想はまた違ってくる。

 彼らのうちの何人からは、色々と文句を言いながらも「でもやっぱり欲しいなぁ」という言葉が漏れてくる。そんな賛否両論のX505のソニースタイル特別モデルを先月末、数日間ながら試用することができた。

筆者が求める機能と性能はそこにはない、が

 筆者のように、職業的にPCを手放せない人間にとって「PCを選ぶ基準」は実に単純だ。PCを使う仕事ゆえ、使い方がある程度決まっており、その使い方に耐えうるPCのスペックも経験的に決まってくる。嗜好品ではないから選択における考察過程は至ってクールだ。

 筆者にとって、PCに求める条件は以下のような項目になる。

「キーボード」長文執筆も苦にならない程度に良好なタッチであること。

「画面解像度」長時間文字を読み続けても疲れない程度であること。

「バッテリー」一日中携帯しながら取材を続けても余裕があること。

「HDD」撮影した膨大な画像、大量の資料、辞書、地図、百科事典などのデータを記録できるほど大容量であること。

 この条件に当てはめてみると、X505は筆者のような「取材記者」には適していないことになる。キーボードは十分な打ちやすさを確保しているが、パームレストがないため膝の上で本体が安定しない。記者会見やテクニカルカンファレンスなどでは机が利用できない場合も多いから、パームレストの有無は意外と重要なポイントになる。

 また、10.4インチで1024×768ドットという画面サイズ。この解像度はWebページやテキストエディタの文書を大量に読む上で許容できるギリギリのサイズだ。ユーザーの年齢や普段の利用環境にもよるが、モバイルPCで長時間仕事をするならば「12.1インチぐらいがちょうどいい」というユーザーが多い。

 バッテリーも人によって要求値は異なるが、筆者の場合で一日の実利用時間は4〜8時間といったところ。X505を実際に使ってみたところ、無線LANを使わず液晶バックライトの輝度も適度に調整しておけば3時間程度、省電力設定をあまり厳しくしていない場合は2.5時間前後で大体打ち止めとなる。予備バッテリーを持ち歩けばいいのだが、無線LANを多用する場合を考えると予備に2本は欲しい。となると、充電などのバッテリー状態管理が少々面倒になってくる。

 さて、以上の「言いがかり」的注文は、実をいうと本当に欲しい製品なら目を瞑ることもできる条件だったりする。しかし、「20Gバイト」というHDD容量は見逃すことができない。筆者の場合、いつも使っているツールをインストールしただけで、大部分を使い尽くしてしまうからだ。それでも将来、HDDのアップグレードが可能ならば「よしよし、今のところは許してあげよう」で済む。

 ところが、東芝製の1.8インチHDDが一般向け市場に出回ったことは、筆者の知る限り1度だけ。しかも数量が少なかったらしく、噂が出回った程度のタイミングで売り切れてしまった。さらに、X505の構造を考えるとHDDの交換作業には高い組み立てスキルが必要になるだろう。「個人的HDD問題」としては、このアップグレーダビリティが低いことがより深刻なポイントである。

 また実際に使っていると、製品として未成熟な部分もいくつか見受けられた。たとえばデザインのワンポイントにもなっている電源スイッチ。大きなスイッチだけに手で触れてしまいやすいが、筐体を持ち上げようと右手でヒンジの付け根を持つと、無意識にスイッチに触れて電源ボタンが作動してしまうことがあった。1秒以上長押しでしか作動しないなど、何らかの配慮が欲しいところだが、残念なことに瞬間的にスイッチを押しただけでも反応してしまう。

 いやいや、これだけ悪い面ばかりを書き連ねると、ソニーに対して筆者がなにやら悪意を持っているように思われるかもしれない。もちろん、筆者にはそんな悪意など「微塵もない」。ただ、筆者が必要とする機能や性能だけで選ぶなら、X505は購入候補に挙がらない。これは嗜好品を探したいと思っていないのだから、当然のことである。

 にもかかわらず、筆者の周りでX505が気になるという仲間が多いのはなぜだろうか?

充足することと、満足すること

 仕事道具だからPCの機種選定は至ってクール……と書いたが、それはあくまでも建前である。これが、自分の所有物ではないならば、そこに感情の入り込む余地はない。たとえば企業の購買部が、社内向けPCとして標準モデルをいくつか選択するならば、実に簡単に機種を選べるだろう。導入するタイミングと業務で必要なアプリケーション、PCを使う社員の職種などから勘案し、コストを考慮した上で「クールに」選ぶことができる。

[本田雅一, ITmedia ]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 1/2 | 次のページ


モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!