> レビュー 2003年12月16日 03:00 PM 更新

“考えるための道具”として進化を遂げた一太郎2004(1/2)

「一太郎2004」はワープロソフトというジャンルを超越し、「考えるための道具」「質の高い考えを引き出すためのツール」となるべく開発が進められてきた。「ワープロといえば一太郎」「IMEはATOKが一番」などという熱狂的なユーザーも多いが、一太郎2004は私たちに何を提案してくれるのだろうか。

 ワープロソフトを清書ツールとしてのみ使うだけなら、どのソフトウェアでも機能は十分に成熟の域に達している。しかし一太郎は、バージョンアップのたびに新しいツールとしての魅力を伴って登場し、私たちの文書作成能力向上に貢献してきた。

 「考えるための道具」をコンセプトとする「一太郎2004 for Windows」(以下、一太郎2004)も、思考の流れを妨げずに文書を作成する工夫や、新たな使い勝手の提案にあふれている。


 なお、本レビューは開発途上の「一太郎2004β版」と「ATOK17 for Windowsβ版」を試用して執筆しており、製品版とは異なる可能性があるので留意してほしい。

知的作業を支援する各種機能を搭載

 一太郎2004の編集画面左側に表示される新しいインタフェースが「シンキングバー」である。シンキングバー上には、従来の編集モードである「基本編集」タブに加え、「アウトラインスタイル」と「マルチビュー」のタブシートが追加され、作成する文書に適した編集モードに切り替えられる。

 「アウトラインスタイル」は、全体の構成を把握しながら文書を作成する編集モードである。段落単位にアウトラインレベルを設定し、文書を階層構造で管理しながら編集できる。アウトラインレベルに応じた書式(段落スタイル)設定や字下げ表示が行われるため、視覚的にも階層化される。あるレベル以上の段落だけを表示するといった操作により、長文作成時にも全体の構成をつかみやすい。アウトラインレベルの変更や段落の移動も、マウスやキーボード操作で容易に行える。

 アウトラインスタイルのルーツは、MS-DOS版「一太郎Ver.4.3」の長文作成機能までさかのぼる。ランク、連番、参照、目次、索引といった長文作成機能は、ワープロソフトの文書作成概念を大きく変革させた、驚くべき提案であった。一太郎2004がサポートするアウトラインスタイルは成熟したテクノロジーとして提供され、報告書や企画書、論文など、論理立ててまとめ上げる文書作りに欠かせない編集モードとなっている。


アウトラインスタイル」は、文書全体の流れや構成を把握しながら文書を作成する編集モードだ

 「マルチビュー」は、一つの文書を好みの形で絞り込んで表示・印刷できる編集モードだ。A、B、Cの3種類のビュータイプを設定し、利用目的や相手に応じて、「この情報を隠して表示・印刷」といった操作が可能となる。絞り込み表示を行っている段落だけを別ファイルとして書き出すこともできる。


編集画面の「A」「B」「C」列をクリックして、段落単位でビュータイプを設定していく

 画面右側にはお馴染みの「ナレッジウィンドウ」が健在だ。ナレッジウィンドウは「シンキングバー」の編集モードに応じて変化する。よく使う機能がシートとして集められており、右端のタブで切り替えて利用する。

 ナレッジウィンドウで利用する「シンキングテンプレート」では、ビジネスに最適なノウハウが詰まった日本能率協会総合研究所監修の「ビジネスノウハウ[総合編]for 一太郎」が利用できる。ビジネスシーンで多用される企画書や報告書に加え、アイデア発想法、自己啓発、目標管理など、幅広い分野に対応したビジネステンプレートが約300点収録されており、ビジネス文書作成を支援する。「ビジネスノウハウ[総合編]for 一太郎」は別売(5800円)だが、いくつかのサンプルが収録されている。また、ユーザー自身がテンプレートを作成することもできる。

 文書に指定しておいた「報告書」「議事録」などのような文書種類でファイルを素早く抽出したり、文書にタグを挿入しておき、複数文書から指定した項目だけを抜き出すことができる。例えば会議録のファイルから新規提案だけを抜き出すなど、文書内の情報を再活用できるわけだ。

 このように一太郎2004は、ビジネスシーンにおける知的ツールとしての機能強化を中心に、「考える道具」となるための進化を遂げた。

[川越裕之, ITmedia ]

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