“液状化”や“道路陥没”対策に有効な「3次元地盤モデル」、渋谷再開発にも活用buildingSMART International Summit,Tokyo(1/2 ページ)

「buildingSMART International Summit,Tokyo」が2018年10月16〜19日に開催された。プログラムの中から、3次元地盤モデル(3D subsurface model)の取り組みを語った応用地質・島裕雅氏の講演を取り上げる。

» 2018年10月25日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]

 BIMの標準化や利用を促進する国際標準化サミット「buildingSMART International Summit」が6年ぶりに東京で、2018年10月16〜19日に開催された。サミットでは、日本および世界各国のBIM/CIMの国際標準化への取り組みや最新動向、openBIMに関する技術や課題について、多彩な講演が会期中に連日行われた。

 本稿では、東京国際交流館プラザ平成で行われた初日のプログラムから、インフラの設計や維持・管理に3次元地盤モデル(3D subsurface model)を活用している応用地質・島裕雅氏の講演を取り上げる。

インフラ工事の設計段階で、地下リスク対策に有効な3D地盤モデル

応用地質・島裕雅氏

 応用地質は61年前に地質調査会社として設立。現在では、全国にグループ企業が20社もあり、年商は200億円を超える。

 これまでにダム・高速道路・新幹線などの社会インフラの整備に貢献する他、地震や台風など災害が多発する日本の強靭化に向けて各種サービスを提供してきた。さらに環境分野やエネルギー分野などの地球科学に関連するさまざまな課題の解決にも取り組んでいる。

 現在の事業は、資源・エネルギー、インフラメンテナンス、防災・減災、環境の4つを柱に展開。なかでもインフラは、得意としている道路構造物および河川構造物の点検、調査、診断をはじめ、施工監理から、維持・メンテナンスまでを手掛け、地盤工学ソリューションに注力している。

 同社では「地中は、地球に残された最後のフロンティア」として、とくにICTを組み合わせた地下探査技術の開発には積極的に取り組んでいる。現在では、専用のPケーブルを用いて海底の3Dの地震データを効率的に集める調査、都市部ではソナーを配置して地震のせん断波の検知などを行っている。新しい技術としては、“液状化”のポテンシャルを調べる手法が同社のコアラボで試みているという。

Pケーブルを使用した海底の地震調査
応用地質が開発した路面下空洞探査車「ロードビジュアライザ」による地下探査

 島氏によれば、「地盤リスクは、安全・コスト・パフォーマンスのさまざまな面でインフラに影響する」と指摘する。道路上で、30m(メートル)の陥没が起きた博多駅前の事故でも証明されたように、世界の大都市は軟盤の上に立地している。東京も遠い昔には、丘も多く荒川が中央を流れていたが、柔らかい粘土や砂で流路が埋没し、柔らかい地層の上に大都市が成り立っている。地面の下は、普段は見えないため、地質の不確実性(地質リスク)に起因する設計の不具合や工事の遅延は度々起こっている。

 インフラ工事の際には、こうした地下の情報を事前に知る必要があり、地盤特性を理解し適切な対策をとらなければならない。2011年に発生した東日本大震災では、関東圏の浦安市で大規模な液状化現象が発生。ライフラインが破壊され、堤防も崩壊し、浦安市だけで被害額は7億ドル(734億円)にも上った。

地下鉄や水道管などが複雑に入り乱れている都市部における地下リスク

 こうした完成後のインフラ被害を防ぐためにも、島氏は「3Dによる地下構造の可視化は不可欠。インフラ構造物の維持・管理も含めたライフサイクルを考える上でも、3D地盤モデルは有効な手段だ。地面の下は、均質な構造をしているわけではなく、3次元で複雑な構造をしているため、隠れたリスクを見つけるには、3Dでの地盤の見える化が非常に重要になってくる」と説明。

 作成する3Dモデルは、都市部においては、地下鉄や上下水道管など、複雑な地下構成物の状況を正確に再現しなければならない。人による解釈や調査方法によって、データにバラツキが出るが、既存の地盤情報や工事工程が進むことで判明する追加情報を取り込むことで、モデルの精度を修正していく必要がある。

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