LED照明の導入効果と注意点 第4回 「運用」:LED照明(2/2 ページ)
LED照明を導入するだけでも大きな節電効果を得られるが、導入後の使い方次第でその効果はさらに大きくなる。連載最終回となる第4回では、導入後の運用で心掛けるべき点を解説する。さらに、効率の良い運用を容易にするオプションや、各メーカーによるLEDならではの取り組みを紹介する。
センサーで照明を自動制御
照明器具の制御に使えるセンサーとしては、まず照度センサーが挙がる。センサー周辺の明るさを検知するセンサーだ。照明器具の近くに設置しておけば、自然光の強さに応じて自動的に光の強さを調節させることができる。また、タイマーを使うという方法もある、時間に応じて照度を変えていくのだ。
もう1つ、人間の存在を感知する「人感センサー」も利用できる。人体が放つ熱(赤外線)を感知して、人間の存在と動きを認識するセンサーだ。これを利用すれば、人間がいるところの照明を自動的に点灯させ、いなくなった後、一定の時間が過ぎたら自動的に消灯させることが可能になる。
一般に、このようなセンサーは照明器具とは別売りで、照度や人の存在を感知するのに最適な場所を調査してから取り付けるものだ。手間がかかるが、1つのセンサーで複数の照明器具を制御できる。照度センサーと人感センサーの機能を併せ持つ製品も存在する(図2)。
アイリスオーヤマは、直管形LED照明に照度センサーを組み込んだ製品(図3)や、人感センサーを組み込んだ製品を販売している。センサーの場所が直管形照明の端と決まってしまう、1つのセンサーを複数の照明器具で共用できないという欠点はあるが、取り付け位置を考える必要がないので、比較的導入しやすい。
人感センサーの使いどころは?
照明の自動制御に役立つセンサーとして人感センサーを紹介したが、実は現在の人感センサーは、どんな場面でも使えるというものではない。人感センサーは赤外線を感知して、人の動きを察知するものだ。人が席に座っていても、ほとんど動かないと動きを感知できず、人がいないと判断してしまう。
現在、人感センサーは廊下、倉庫、トイレなど、「ちょっと入って用を足す」ような場所で使うのが普通だ。オフィスの執務室で使うのは難しい。
そこでパナソニックは、赤外線ではなく、カメラを利用して人間の存在を確実に検知するセンサーを開発している。これなら、オフィスの執務室でも利用できるだろう。
人間の能力を引き出す光、リラックスさせる光
以上のような機能に加えて、シャープとパナソニックは人間の生体リズムに合わせて光の強さだけでなく色も変えるというシステムを開発している。調光だけでなく、調色(光の色を変える)機能を備えるLED照明を時間帯に応じて制御し、作業効率が上がる環境や、よりリラックスできる環境を作るという試みだ。
これは、「サーカディアンリズム」という考え方に基づいたものだ。パナソニックによると、1980年代から研究が続いており、光色が異なる蛍光灯を病院に導入し、サーカディアンリズムの考え方に従って点灯する蛍光灯を切り替え、調光した結果、睡眠障害の改善などに効果があったという。
蛍光灯を使っていた時代は、光の色が異なる蛍光灯を用意して、切り替える必要があったが、LED照明なら、異なる色で光るLED素子を組み合わせて内蔵することで、光の色を変えること(調色)ができる。サーカディアンリズムに従った照明の制御は、LED照明を使うことで実現しやすくなったと言える。
シャープとパナソニックは、主にオフィスにサーカディアンリズムの考え方を広めていきたいと考えている。パナソニックの調査によると、節電のためにオフィス全体を単純に暗くするだけでは、作業ミスが発生する確率が上がるという。
サーカディアンリズムに従った照明の制御では、朝の業務開始時間から昼過ぎまでは青に近い白い光を強く照らして、人をはっきり目覚めさせ、作業効率の向上を狙う。
昼過ぎから夕方にかけては、光の色を少しずつオレンジ色に近い色に変えていき、同時に光を弱くしていく。オレンジ色に近い光に変えていくことで、人をリラックスさせる効果が期待できる。光を弱くしていくことで節電効果も狙えるという(図4)。
パナソニックは東京急行電鉄の自由が丘駅のコンコースに、サーカディアンリズムに従って制御する照明システムを納入している。一方シャープは、2012年3月に家庭向け製品として発売した「さくら色」のLED照明をサーカディアンリズムに応用する可能性を探っているという。
2011年の夏は単純に空調を弱くし、照明を暗くする「我慢の節電」だった。今回紹介したセンサーやサーカディアンリズムを上手に利用すれば、我慢せずに済む節電も実現できるかもしれない。
関連記事
- LED照明の導入効果と注意点 第1回 「消費電力量」
LED導入の効果を最大限に引き出す方法を解説。第1回は消費電力量を検証 - LED照明の導入効果と注意点 第2回 「コスト」
連載第2回。導入コスト回収時期の計算と、導入コスト回収を早める方策を解説 - LED照明の導入効果と注意点 第3回 「機器選定と導入」
第3回では、機器選定時に注意すべき口金の違いや、大きなトラブルを避けるための導入法を解説 - 駅舎照明のLED化で消費電力量半減を見込む、東急自由が丘駅
東急は自由が丘駅の照明設備のほとんどを入れ替え、電力消費量の大幅な節減を狙う - 節電だけでなく「癒し」効果も、シャープが「さくら色」のLED照明を発売
LED照明の光の色を調節できるという特長を生かして、シャープはさくら色に光るLED照明を開発、発売した - LED照明市場が前年比155%増、節電の影響で
2011年は電力需給問題が影響して、消費電力が少ないLED照明を導入した人が増えた
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.