米国最大の電力会社が原子力発電所を廃炉に、天然ガス火力へ移行:電力供給サービス
昨年10月に米国の中西部にある原子力発電所の閉鎖が発表されたのに続き、今度は南部のフロリダ州でも原子力発電所の廃炉が決定した。2009年に原子炉建屋の外壁にひび割れなどが見つかってから運転を停止していたが、修復コストの増大を理由に運転再開を断念した。
米国最大の電力会社であるデュークエナジー(Duke Energy)がフロリダ州にある原子力発電所の廃炉を決定した。1977年に運転を開始したクリスタルリバー原子力発電所(図1)で、発電能力は86万kWある。関西電力の大飯発電所の1基が118万kW(4基合計で471万kW)であり、それと比べて少し小さい規模になる。
クリスタルリバー発電所では2009年の秋に、原子炉を格納した建屋の外壁に剥離やひび割れが見つかり、運転を停止した。2011年に修復を試みたが、格納構造の別の場所に剥離が生じる結果になり、修復の可能性や必要なコストを検討してきた。結局のところ修復に要するコストが相当な規模に膨れ上がる可能性があることから継続を断念した。
廃炉に向けた具体的なスケジュールは今後詰めるが、除染を含めて必要な措置が完了するまでに、通常40年〜60年かかるとみている。その間もスタッフによる発電所の監視を継続する。
実際に発電所を運営しているのはデュークエナジーの子会社、プログレスエナジーフロリダ(Progress Energy Florida)で、引き続き火力発電や再生可能エネルギーで電力供給を続けていく。同社はクリスタルリバー原子力発電所の敷地内で4基の石炭火力発電設備を運転しており、さらに2018年の稼働に向けて最新鋭の天然ガス火力発電設備の導入を検討している。
米国ではシェールガスの発掘によって天然ガスが長期的に安価で提供できることが確実視されている。昨年10月に大手電力会社のドミニオン(Dominion)が中西部のウィスコンシン州にある原子力発電所の閉鎖を決めた際にも「経済性」を理由に挙げた。長期に及ぶ廃炉までのコストと放射能汚染のリスクを理由に、原子力発電から天然ガスによる火力発電への移行が米国内で急速に進んでいく可能性が高まってきた。
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