発送電分離を先取りした新組織、東京電力が4月からカンパニー制へ移行:電力供給サービス
早ければ2018年にも実施される「発送電分離」を前提に、東京電力が4月1日から、発電・送配電・小売の事業を分割したカンパニー制へ移行する。最大手の東京電力が組織改革を断行することで、発送電分離の実現が近づくのか、移行後の成果が注目される。
このところ東京電力を取り巻く市場環境は厳しさを増すばかりだ。東京都や大手の製造業などが自営の発電設備を増強する一方で、自治体を中心に電力供給契約を新電力に切り替える動きが活発になってきた。もはや独占状態は崩れ始めていて、競争力の強化が急務である。
そうした変革期の真っ只中にいる東京電力が思い切った組織改革に着手した。電力システム改革の目玉とされる「発送電分離」を想定して、発電・送配電・小売の3つの事業に分割したカンパニー制に4月1日から移行する。
3つのカンパニーは「フュエル&パワー」「パワーグリッド」「カスタマーサービス」と名付けられた(図1)。各カンパニーの事業内容を見ると、おおむね発電・送配電・小売に分けられている。さらに共通部門として「コーポレート」が加わる。
ただし完全に発送電分離の形になっていない部分がある。水力発電の販売が送配電を担当するパワーグリッド・カンパニーに入っている点だ。おそらくは新しい水力発電所の建設計画がなく、燃料の調達も必要ないことから、固定の発電設備として送配電ネットワークの一部に組み込んだものと考えられる。
新体制では個々のカンパニーが自立的な事業運営を進めるのと合わせて、新たな管理会計制度を整備してカンパニー単位のコスト・収益管理を徹底させる考えだ。各カンパニーの事業計画は3月末までに公表する予定で、その内容が注目される。
政府は2018年〜2020年に送配電分離を実現する方針を掲げている。電力会社からの反発もあり、計画通りに進展するか現時点では見通しにくいものの、最大手の東京電力がいち早く組織改革に乗り出した影響は大きいだろう。
政府の電力システム改革案では、発電・送配電・小売の各部門が別会社になって持株会社の傘下に入る「法的分離」の形を想定している(図2)。今回の東京電力の新体制は、まさに法的分離を意識した構造になっている。
新たに導入する管理会計制度を通じて、カンパニー単位のコスト・収益管理を徹底できれば、各カンパニーの競争力が高まり、発送電分離が一気に現実味を帯びてくる。逆に弊害が多く出てしまうと、電力システム改革の流れを逆行させることにもなりかねない。新経営陣の手腕が問われるところだ。
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