90億円かけて太陽光や風力の出力安定化へ、全国8地域で実験開始:蓄電・発電機器
環境省が2012年度の補正予算で実施する「再生可能エネルギー導入のための蓄電池制御等実証モデル事業」の対象プロジェクトが決まった。青森県の六ヶ所村から鹿児島県の与論島まで8つの地域で、太陽光発電や風力発電の出力変動を大型の蓄電池で抑制する実験が始まる。
国内で再生可能エネルギーを推進する立場の環境省が90億円の予算を使って大規模な実証実験を開始する。太陽光発電や風力発電で大きな問題になる出力の変動を抑制するために、大型の蓄電池を使って変動分を吸収する試みだ。全国8地域を対象にした6つのプロジェクトを選び、2018年度まで4年間かけて実験を続ける。良好な結果が得られれば、太陽光発電や風力発電の普及に弾みがつく。
環境省が選定した6つのプロジェクトは青森県と秋田県の風力発電所、大阪府の太陽光発電所、さらに九州の離島を対象にした実験プロジェクトが3つ含まれている(図1)。このうち特に規模が大きいのは青森県六ケ所村と九州電力の離島における実験だ。
九州電力は長崎県の対馬のほか、鹿児島県の種子島と奄美大島で同様の実験を実施する。それぞれの島内に2〜3.5MW(メガワット)の大型蓄電池を設置して、太陽光発電所や風力発電所から送られてくる電力を制御する仕組みになる。
特に離島の場合は電力の需要が小さいために、太陽光発電や風力発電の出力変動による影響が相対的に大きく、その結果として電力の周波数が不安定になりやすい。出力の変動分を蓄電池で吸収することによって、電力を安定化させることができる(図2)。
一方の六ヶ所村では大規模な風力発電所が3か所で稼働している。その中のひとつである「六ヶ所村風力発電所」(33MW)に、10MWの蓄電池を併設して出力の安定化を図る。
すでに六ヶ所村では2010年9月から2年間かけて「六ヶ所村スマートグリッド実証実験」に取り組んだ経験がある(図3)。村内にある別の「六ヶ所村二又風力発電所」(51MW)に34MWの蓄電池を設置して、出力制御の実験を実施してきた。
今回は新たに近隣の太陽光発電所からの電力を加えて、風力とのハイブリッド発電の状態でも出力を一定にした送電を試みる予定だ。さらに停電時に風力発電所を独立に稼働させる「自立運転」の手法を確立することも目指す。
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