太陽光発電の急増に電力会社が準備開始、変電所に蓄電池を設置:電力供給サービス
日射量によって電力が変動する太陽光発電の問題点を解消するため、中部電力と三菱電機が共同で試験を開始した。実際に中部電力のメガソーラーから電力を受け入れている長野県の変電所に蓄電池を設置して、充電と放電を実施することで電力の変動を制御する試みだ。
蓄電池を設置したのは長野県の飯田市にある下瀬変電所(図1)。この変電所には同じ市内で稼働している中部電力の「メガソーラーいいだ」をはじめ、一般家庭の太陽光発電システムから送られてくる電力を含めて、受け入れた電力を安定した状態で顧客に送り出す「配電」の役割を担っている。
ところが太陽光発電システムは日射量によって電力が大きく変動するという問題がある。数多くの太陽光発電システムからの電力を受け入れる変電所では、送られてくる電力の変動によって、送り出す電力が変動してしまう可能性があり、送配電ネットワークに悪影響を及ぼしかねない。
そこで変電所に蓄電池を設置して、電力が不足する場合は放電し、過剰な場合は充電することにより、太陽光発電の変動分を吸収して電力の供給を安定させる。中部電力と三菱電機の試験では、変電所にリチウムイオン蓄電池(容量25kWh)のほか、交流/直流変換用のパワーコンディショナを設置した(図2)。このパワーコンディショナには、電圧や電流の変動を監視して蓄電池の充放電を制御するためのシステムが接続されている。
実際の送配電ネットワークにおいては、変電所には77kV(キロボルト)の高圧の電力が送られてきて、これを電圧の低い6.6kVに変換して顧客に向けて送り出す(図3)。さらにメガソーラーや他の発電システムからの電力も集まってくる。これらの電力を監視するのがパワーコンディショナに接続された「監視制御システム」である。
中部電力と三菱電機は12月11日に下瀬変電所で試験を開始した。3年後の2015年11月まで継続する予定で、設置したシステムの有効性を確認するほか、リチウムイオン蓄電池の性能劣化の状況も合わせて評価する。試験の結果をもとに、将来に向けて太陽光発電による電力を大量に受け入れた場合を想定して、送配電ネットワークを安定化させる対策を講じることにしている。
下瀬発電所がある飯田市では、太陽光発電システムの導入が活発に進められている。今後さらに発電量が増加することは確実で、試験の実施場所としては最適な地域になる。
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