工場の能力を損なわず省エネ、オムロンは生産ラインの測定で18%節電:エネルギー管理
工場の消費電力を削減するにはどうすればよいのか。照明や空調の節約ではすぐに頭打ちになる。オムロンは実際に動いてる生産ラインを各種センサーで分析、必ずしも必要ない電力を使っていることを割り出し、節電につなげた。
節電はむやみに照明を切れば実行できるというものではない。工場の節電はそもそも生産に必要な機械が動作しているため難しい。どうすれば生産能力を落とさずに節電できるのだろうか。
オムロンは2013年5月、2012年度冬期の節電の結果を公表した。2010年度と比較して18%以上のピーク電力を削減できた。事業活動や採算活動に支障をきたさないことはもちろん、自家発電設備を必要以上に駆動させたり、工場内で従業委に過度な負担を強いることなく達成できたという。
2012年12月3日から2013年3月29日の期間に対策を実施した。関西電力管内では関西広域連合が6%の削減を要請。オムロンは10%以上という自主目標を立て、18%以上を達成した*1)。
*1) 全国では社会的要請はなかったが、やはり10%以上の目標、18%以上の実績だった。
節電の手法は、2011年度から開始したオムロン独自の省エネ・省資源化活動「Ecoものづくり」にあるという。同活動は施設や生産設備の運用を改善するというもの。品質や生産性を維持・工場しながら、製造現場のエネルギー効率を最大化しようとする活動だ。
どうすればこのような一見無理な活動を実現できるのだろうか。ポイントは生産に必要なエネルギーを必要なときに必要なだけ効率良く提供することにあるという。例えば、複数の装置の間を加工品が通過していく工程であれば、必ずどこかで待ちが発生する。待っている装置をスタンバイモードに移行すれば、消費電力をカットしつつ、生産には影響がでない。
Ecoものづくりではまず、電力量モニターやパーティクル(微粒子)センサー、温湿度センサーなどを使って、生産ラインから削減可能な場所を探し出す「診える化」を実行。その上で、効率良く節電できる装置や工程をカイゼンしていった。
草津工場(滋賀県草津市)では生産設備の待機状態を製造工程における電力使用量の推移自体から判定した(図1)。これにより不要な電力や圧縮エア、窒素ガスなどの使用を自動的に抑制する「製造工程のアイドリングストップ制御」を実現できた。このような取り組みは世界でも例がないという。
製造工程のアイドリングストップ制御の効果は大きい。例えばプリント基板に部品をはんだ付けする工程では、生産設備が非稼働中に消費する待機電力を25%削減できた。これはリフロー炉(図2)でのカイゼンだ。排気用ファンを自動的に停止させることで電力使用量を20%削減できた工程もあったという。この工程では同時に窒素ガスの使用量を27%削減している。
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