最も効率の高いLED照明は?:ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)
電力を光に変える効率が高い「LED照明」。既に白熱電球の効率を大きく上回り、蛍光灯と同等以上に高まっている。それでは将来、蛍光灯の何倍程度まで効率が上がる可能性があるのだろうか。100lm/W(ルーメン/W)という標準的な蛍光灯の何倍になるのかを答えて欲しい。
正解:
d.約7倍
ミニ解説
LED照明を作るには、2種類の半導体材料が必要だ。2種類の半導体をすき間なく並べ(接合し)、電流を流すと境界で発光する。2種類の半導体材料とは、p型半導体とn型半導体だ。p型半導体側から流れてきた電子と、p型半導体から流れてきた正孔(ホール)が、接合面(pn接合)で結合し、光に変わるという仕組みだ。
このような「単純」な仕組みであるため、理想的な場合に1Wの電力がどの程度の量の光に変わるかを計算できる。計算によれば人の目の感度が最も高くなる波長555nmの緑色の光(単色光)を作り出した場合、683lm/Wだ。従って、正解はdの約7倍だ。
具体的に発光効率が高いLED照明を作り出すにはどうすればよいのだろうか。LED照明の発光効率は4つの項を含む、次のような式で計算できる。
- 発光効率 = 電力効率 × 内部量子効率 × 取り出し効率 × 白色変換効率
電力効率とは入力電力に対する出力電力の割合を言う。LED照明は電力を自己消費するため、100%にはならない。内部量子効率とはLEDに流した電流(電子の個数)のうち、何個が光子に変わったかという比率だ。先ほどの接合面でも100%が光に変わるのではない。取り出し効率とは、発生した光子の個数に対して、LEDチップの外部に放出される光子の比率をいう。せっかく光に変わっても内部で再吸収されるものがあるため、これも100%にはならない。白色変換効率とは、単色光を白色光に変える際の効率だ。LEDは仕組み上、何らかの色の単色光を発する。現在市販のLED照明では青色光を発しており、この一部を蛍光体によって黄色に変え、青色と黄色の混色で白色光に見せている。ここでも無駄がでる。
例えば117lm/Wという発光効率のLED照明があったとしよう。どうしてこのような値になるのだろうか。例えば次のような場合が考えられる。以下に挙げた数値は比較的現実的なものだ。
- 683lm/W × 0.8 × 0.65 × 0.6 × 0.55=117lm/W
4つの項のうち、最初の3つの項は0.9以上に高められる見込みがある。するとここまでの計算で497lm/Wになる。課題があるのは最後の白色変換効率であり、この部分の効率でLED照明自体の発光効率が決まる。0.55のままであれば、273lm/Wだ。
2015年時点で200lm/Wが実現
現時点で最も高効率なLED照明は、オランダRoyal Philips Electronicsが開発し、2013年4月に発表したものだ(図1)。発光効率は、200lm/Wであり、蛍光灯の2倍も効率が高い。4つの項目の値がどのようになっているのかは不明だが、特に劣った値のものがないことは推測できる。
同社によれば、開発品を2015年にオフィス用または産業用のLED照明として市場に投入する予定だ。
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