国定公園の中で地熱発電の掘削調査、秋田県の湯沢市で始まる:自然エネルギー
膨大なエネルギーを秘める地熱の開発プロジェクトがようやく活発になってきた。出光興産など3社が北海道と秋田県で発電所の建設に向けた掘削調査を開始した。このうち秋田県湯沢市の調査地域は国定公園の中にあり、地熱発電で大きな課題になっている環境保全に取り組む。
新たに掘削調査を開始した場所は、北海道の小樽市に近い阿女鱒岳(あめますだけ)地域と、秋田県湯沢市の小安(おやす)地域の2カ所である。かねてから地熱発電の開発に取り組んでいる出光興産のほか、国際石油開発帝石と三井石油開発が加わって3社共同でプロジェクトを進める。
すでに阿女鱒岳では7月16日から、小安地域でも7月25日から掘削工事を開始した(図1)。地熱発電の開発は5段階を経るのが一般的で、このうちの第1段階にあたる「地表調査・掘削調査」を実施する。地下1700〜2000メートルの深さまで調査井を掘り、3〜4カ月かけて地質の構造や地下水の温度を調べる予定だ。
3社は2015年度までに複数の調査井を掘って結果をまとめたうえで、第2段階の「噴出試験(探査)」に移行する計画である。噴出試験を開始してから発電所の運転までは通常の場合で10年程度かかるため、発電が開始できるのは2020年代の半ばになる見通しだ(図2)。ただし環境省が第3段階の「環境アセスメント」の期間を半分程度に短縮することを検討しているため、1〜2年の前倒しは可能になる。
2カ所の調査地域の中でも、湯沢市の小安地域は「栗駒国定公園」の中にあるために厳しい条件が付く(図3)。従来は国立・国定公園の中では地熱発電が認められていなかった。しかし地熱が豊富な場所は公園内に多く、再生可能エネルギーを促進することを目的に、2012年3月に規制が緩和された。
国立・国定公園の中でも自然景観を維持する重要性が相対的に低い「第2種特別地域」と「第3種特別地域」においては、環境保全や公園の利用に支障がない場合に限って開発を認めることになった。その第1号が小安地域のプロジェクトである。
近くには東北電力の「上の岱(うえのたい)地熱発電所」が1994年から運転中で、発電規模は28.8MW(メガワット)に達する。一帯が地熱発電の有望な地域であることは証明済みと言ってもよい。小安地域の調査が順調に進めば、他の国立・国定公園でも地熱発電の開発プロジェクトが増えることが予想される。それだけに今後の進展が注目される。
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