1兆円を超えるエネルギー関連予算、2014年度の概算要求で:法制度・規制
国の産業支援策の中で最大の重点分野になっているエネルギー関連の予算が2014年度に1兆円を超える見通しだ。経済産業省が「エネルギー対策特別会計」の対象として概算要求で出した総額は1兆294億円にのぼり、2013年度の予算を2461億円も上回る大規模になる。
1兆円を超える概算要求のうち、半分以上の5267億円を「エネルギー需給構造高度化対策」に割り当てる(図1)。最大のテーマは経済産業省が2013年に入って掲げた「エネルギー最先進国」の実現である。今後の国のエネルギー政策を「生産」「流通」「消費」の3段階に分けて実施して、国内のエネルギー需給体制を世界のトップレベルに引き上げる狙いだ。
中でも「生産」の領域に最も大きな3805億円の予算を配分する。再生可能エネルギーを最大限に導入するための送電網の整備のほか、石炭火力発電の高効率化やメタンハイドレートの資源開発などが重点政策になる(図2)。
再生可能エネルギーの普及支援策では、将来の導入拡大が期待される「浮体式」の洋上風力発電に310億円を投じる。2013年度中に試運転を開始する予定の福島県沖の実証プロジェクトを中心に、世界で最先端の洋上風力発電技術の確立を目指す。合わせて風力発電の送電対策として、大型の蓄電池を使った実証事業を北海道と東北で実施する予定だ。2013年度に続いて250億円の予算を確保する。
生産に次いで大きな予算を配分するのは「消費」の領域で、総額3044億円を割り当てる。まだ国内で十分に浸透していない省エネ対策の普及が最大の課題になる(図3)。特に対策が遅れている工場などの産業部門を対象に、エネルギー効率の高い機器やエネルギー管理システムの導入を支援するための補助金に700億円以上を投入する。
2014年度に開始する新しい政策では、燃料電池に関する予算規模が大きい。家庭を対象にした民生用の燃料電池、いわゆる「エネファーム」の導入を促進するための補助金として、新たに224億円を予算に盛り込む。政府は自立分散型のエネルギー供給体制に向けて、2030年までにエネファームの導入台数を530万台まで拡大する目標を掲げている。大型の予算で一気に普及を図る狙いだ。
今後のエネルギー戦略を先取りする形で長期展望に立った政策が数多く見受けられる中で、大きな疑問符が付く項目もある。相変わらず石油関連に巨額の予算を費やす点だ。「流通」の領域で2035億円の予算を見込んでいるが、その大半が石油の安定確保に使われる(図4)。さらに「生産」の領域でも石油関連の予算が目立つ。
当面は自動車産業を中心に石油に依存せざるを得ない状況にあるとはいえ、2013年度よりも予算を増額するほどの必要性が果たしてあるのか。長年にわたって重厚長大産業を支援し続けてきた経済産業省の旧態依然とした発想を改革することも、将来のエネルギー政策の重要な課題と言える。
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