国内の太陽光市場は1兆円を突破したが、2014年度以降に縮小する――矢野経済研究所:自然エネルギー(2/2 ページ)
国内の太陽光発電市場はどのような指標から判断しても急速に拡大している。この勢いはどこまで続くのだろうか。矢野経済研究所によれば、2012年度の規模が2014年度には約2倍に拡大したのち、急速に縮小していくのだという。どのような理由によるのか。
公共・産業用市場は今後急激に縮小
同社の予測のうち、最も深刻なのが2014年度以降の市場動向だ。住宅用は未導入の既築住宅が減少することや、売上単価の高い公共・産業用にメーカーの販売努力が向くことから急速な伸びは期待できない。しかし、新築住宅向けは搭載率が今後も上昇していくことから緩やかな成長が続くとした。2013年度の7506億円が、2020年度には8010億円まで拡大する。
公共・産業用市場は違う。2014年度までは急拡大するが、FITの買取価格の引き下げや、設置場所の不足によって市場が急速にしぼんでしまう。2013年度の予測市場規模1兆5175億円が、2014年度には2兆2905億円で天井に当たり、2020年度には2007億円にまで縮んでしまうと予測した。このため、住宅用と公共・産業用と合計した市場規模でも2020年度は1兆17億円にとどまり、これは2012年度の実績を下回る。
矢野経済研究所の分析からも、国内市場の規模を左右する要因が2つあることが分かる。1つはFITだ。住宅市場はFITの買取価格に対する反応が鈍いが、公共・産業用は「投資」としての色彩が強い。つまりFITの買取価格引き下げに反応しやすい。FITの買取価格に応じてハードウェアのコストや工事コストが下がっていかない場合、矢野経済研究所の分析通りになる可能性は高いと考える。特に全コストに占める比率が高い工事コストに2つ課題があるだろう。
まず、現時点では国内の工事コストに関する大規模な統計資料がなく、工事コストのうち、どの部分を改善すればよいのかが分からない。分からないままでは改善努力が実を結ばない。もう1つは標準的な工法がないことだ。標準的な工法が広まり、その工法に従って作業できる技術者が育ってくれば工事コストは下がる。このような動きがない限り市場の成長は鈍化する。
国内市場の規模を左右するもう1つの要因は設置場所だ。今回の公開資料では工場や物流センター、ビルなどの建物の屋根に設置するタイプの太陽光発電システムには言及していない。この市場は現在まだまだ未開拓な段階にある。さらに、壁面設置となるとまだまだ技術開発や実証実験の段階にある。あらゆる場所に設置できる太陽光発電システムの市場投入に期待したい。
今回の調査結果は矢野経済研究所が2013年6月から8月にかけて太陽光発電システムの関連部材を製造する国内メーカーや発電システムのインテグレーター、発電システムの販売事業者へのヒアリングによって得たものである。出力により、住宅用と公共・産業用を定義している。出力10kW未満で主に戸建住宅の屋根に設置されるシステムを住宅用とし、10kW以上で全量買取制度の対象となるシステムを公共・産業用としている。
なお、同社は今回の調査結果を175ページのレポートにまとめた「2013 太陽光発電システム市場の現状と将来展望」を販売している。
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