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「藻」のチカラで空を飛ぶ、光合成でA重油を製造自然エネルギー(2/2 ページ)

IHIなど3社が2011年から取り組む藻類バイオマス研究。2013年11月には屋外の試験プラントにおいて、安定的培養に成功した。A重油と似た油を取り出すことができるため、まずはジェット燃料を狙う。2020年までに大規模プラントを立ち上げて商用化を目指す計画だ。

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1000倍の速度で増殖する緑藻

 培養した緑藻は神戸大学教授の榎本平氏が顧問を務めるジーン・アンド・ジーンテクノロジーが品種改良した高速増殖型ボツリオコッカス(Botryococcus braunii、榎本藻)がベースとなっている*2)。この緑藻は一般的なボツリオコッカスと比較して好条件下では増殖速度が1000倍に達する。1個の細胞が1カ月後に4000個に増えるペースだ。つまり油を短期間に大量に抽出できる。

 試験プラントで用いた緑藻は、この榎本藻に対してネオ・モルガン研究所が遺伝子組み換えを除くさまざまな改良を加えたものだ(図2)。図2にある緑色の房1つが1個の細胞である。白く縁取られた濃紺色の円が油分。

*2) 図2にも写っているようにボツリオコッカスは単細胞生物だが群体性があり、油分を細胞内ではなく、群体内の細胞間隙に蓄える性質がある。乾燥重量当たりの油分含有量が75%を超えることがあり、光合成を行う藻類としては最も高いという。


図2 培養中の緑藻の光学顕微鏡像。出典:IHI

2つの条件を満たせるのか

 緑藻を素早く量産するには2つの条件がある。水に含まれるCO2の濃度と水温だ。「自然条件下のCO2濃度では不十分であり、今回の安定培養では外部からCO2を吹き込んでいる。大規模プラントでも吹き込みは継続する見込みだ。実験中の緑藻が成長するために最適な水温は30度だが、屋外施設であるため、この条件を満たすことは少ない。なお、エネルギーを消費してしまうため加熱用の機器は導入しにくい」(IHI)。

 これらの条件を満たす手法について、IHIはコメントしていないものの、解決策がある。工場との組み合わせ設置だ。IHIは工場の温排水を利用するバイナリー発電機を製品化している(関連記事)。温排水を直接培養槽に導入することはできないが、30度に加熱する際に利用できそうだ。CO2についても工場の排煙からCO2だけを分離して利用する技術が存在する(関連記事)。

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