脱・石油を急ぐ中部電力、ガス火力発電で年400億円以上のコスト削減へ:電力供給サービス
電力会社の中で最も積極的に事業構造の改革を進めているのが中部電力である。燃料費の高い石油火力の比率を1%まで引き下げる一方、最新のガス火力発電設備の増強を急ぐ。新潟県に建設中の「上越火力発電所」が全面稼働すると、燃料費を年間に400億円以上も削減できる見込みだ。
中部電力は電気料金の値上げを申請中で、新料金の原価に織り込む燃料費の削減策として石油からガスへの移行を急ピッチで進めている。2014年4月に予定している値上げの最大の要因は、火力発電の燃料費の増加だ。2014〜2016年度の3年間の平均で、前回の値上げ時(2008年度)と比べて年間に約5000億円も燃料費が増える見通しである(図1)。
その内訳をみると、ガス火力による発電量を大幅に増やす一方で、電力1kWhあたりの単価が最も高い石油火力を半分近くに縮小する。発電量全体に占める割合はガス火力が66%まで上昇するのに対して、石油火力はわずか1%にまで下がる。この結果、中部電力の石油消費量は他の電力会社と比べて圧倒的に少なくなる(図2)。
脱・石油の取り組みを象徴するのが、新潟県に建設中の「上越火力発電所」である。最先端のガスコンバインドサイクル方式を採用して、従来の火力発電よりも約1.5倍の発電効率を発揮することができる。4基の発電設備のうち3基が稼働中で、4基目も2014年5月に営業運転を開始する予定だ(図3)。
4基を合計すると、発電規模は238万kWに達する。全面稼働によって石油からガスへの移行が進み、2016〜2018年度の3年間で平均426億円の燃料費を削減できる見込みである。
さらに愛知県の「西名古屋火力発電所」でも石油からガスコンバインドサイクルへ設備を更新する計画だ。2017年度までに232万kWの規模で営業運転を開始する予定で、それと並行して米国からシェールガスの輸入も始まる。
2017年度以降は火力発電に必要な燃料費が下がって、電気料金を値下げできる余地が生まれてくる。ただし中部電力の計画では2015年度から浜岡原子力発電所を段階的に再稼働させることも想定している。その状況によって収支構造は大きく変わるものの、原子力発電所を再稼働できなくても燃料費の上昇を抑えられる体制ができつつある。
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