木質バイオマスによる電力を地産地消、岩手県北部で1万2000世帯分:スマートシティ
ブナなどの森林資源が豊富な岩手県の北部で、木質バイオマスを使った大規模な発電設備の建設が始まる。燃料の木材を地元の流通協同組合が一元的に供給して、2016年2月に発電を開始する計画だ。発電規模は6MWを超える。地元の小中学校を含む公共施設のほか一般企業にも電力を販売する。
木質バイオマスによる発電設備の建設予定地は、岩手県の一戸町(いちのへまち)が運営する工業団地の中にある。一戸町が立地する岩手県北部は林業の盛んな地域で、隣接する青森県や秋田県を含めて間伐材などの未利用木材が豊富に存在する。この木質バイオマスを有効活用して、再生可能エネルギーの地産地消を推進する計画だ。
建設するバイオマス発電設備は出力が6.25MW(メガワット)で、年間の発電量は4950万kWhを想定している。このうち4300万kWhを販売する方針だ。一般家庭で約1万2000世帯分に相当する供給量になる。
発電事業の運営主体は2014年1月に現地に新設する「一戸フォレストパワー」である(図1)。新会社はバイオマス発電の建設・運営事業を展開するフジコーと、エネルギー管理システムで数多くの実績があるエナリスが共同で設立する。さらにエナリスが運営するグリーン電力専門の投資ファンド「緑の電力ファンド」も出資する予定だ。
投資額は約28億円で、発電設備の運転開始は2016年2月を見込んでいる。CO2を排出しないグリーン電力として、地元の小中学校や町役場を含む公共施設のほか、一般企業にも販売していく。エナリスは特定規模電気事業者(PPS、新電力)に登録して企業向けに電力を販売してきた実績があり、新たに小売事業の別会社「地産地消PPS」も設立する。
一方で燃料になる木材は盛岡市に本拠を置く「ノースジャパン素材流通協同組合」が一元的に供給する体制をとる。ノースジャパンには岩手・青森・秋田の3県の森林事業者を中心に114社が加盟している。
発電設備の建設・運営を担当するフジコーは、千葉県の白井市で木くずを燃料にしたバイオマスガス化発電設備を2007年から稼働させている(図2)。木くずを破砕してから低酸素状態で可燃性のガスを抽出する方式により、1.8MWの電力を供給することができる。一戸町にも同様の方式による発電設備を導入するものとみられる。
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