打ち出の小槌か「1000V」、大規模太陽光のコスト低減と効率向上:自然エネルギー
NTTファシリティーズは同社として21番目のメガソーラーを茨城県土浦市に完成させた。特徴は所内の直流電圧を従来の600Vから1000Vに高めたこと。これにより、構築コストを引き下げ、所内の効率を高めることができた。
「従来の設計と比べて、構築コストを10〜15%引き下げることができた」(NTTファシリティーズ)。
同社は、メガソーラーの構築コスト低減、発電量増加に役立つ取り組みを進めている。2014年3月に完成を発表した直流出力1.682MWの「F土浦太陽光発電所」(茨城県土浦市管谷町)が舞台だ(図1、図2)。発電所の規模は、想定年間発電量約1892MWh。一般家庭の消費電力に換算して約515世帯分だ。
1000Vで構築コスト低減
構築コスト低減の手法は、メガソーラー内部で電力を送る際の電圧を高めたこと。太陽電池モジュール1枚当たりの直流出力電圧は数十V程度。小規模から大規模まで通常の太陽光発電システムでは、複数のモジュールをまず直列につないでストリングを形作る。電圧を高めた方がシステム全体の効率が高くなるためだ。その後、直流から交流に変換するために、パワーコンディショナー(PCS)へストリングを接続する。パワーコンディショナーに入力する直流電圧は、600V程度が多い。
これを1000Vに改めた。太陽電池モジュールの総数が変わらない場合、メガソーラー構築に必要なパワーコンディショナーの数が減る。同時にパワーコンディショナー用の建屋や保護盤(昇圧Tr)、集電盤、接続箱も減る(図3)。
パワーコンディショナー1台当たりのコストは増えるものの、メガソーラー全体の構築コストは減り、冒頭の発言につながる。600Vシステムと比べて1000Vシステムでは10〜15%構築コストを引き下げることができる。
発電量も1000V化で高まる
発電量増加の手法も1000V対応で実現した。太陽光発電システムでは、太陽電池モジュールが発電した電力を系統に送り出すまで、何段階かに分かれた損失が起こる(図4)。電圧を変えることで、所内の配線上で起こる直流損失と、パワーコンディショナーでの直流交流変換時に起こる損失などを減らすことができた。
「他社のメガソーラーは(所内の)効率が70%程度である。当社のメガソーラーは従来から85%と効率が高かった。今回、1000V対応によりさらに90%まで高めることができた」(NTTファシリティーズ)。
なお、同社はメガソーラー完成後の運用コスト低減についても、同発電所で検証を開始した。従来採用していなかった防草シートを使う。
「メガソーラー内部で、防草シートを設置しない場所と設置した場所を分け、設置した場所についても、シートメーカー2社の製品を使い分けた。今後の運用でコストの違いを見極める」(NTTファシリティーズ)。
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