ガスも小売全面自由化へ、電力に続いて2020年までに:法制度・規制(2/2 ページ)
電力の代替エネルギーとして重要度が高まるガスの市場でも、小売を全面的に自由化する動きが進んできた。現在のところ電力と同様に家庭向けの小売だけは規制の対象になっているが、政府は電力に続いてガスの市場も開放する方針だ。電力会社とガス会社の自由競争が2020年までに始まる。
200社を超える事業者を2区分に再編
ガスの小売全面自由化に伴って、事業者の区分も見直す予定だ。現在は3つの区分があって、ガスの導管を維持・管理しながら家庭を含めて小売ができる「一般ガス事業者」が最も多い。2012年度末で209社が認可を受け、供給地域を限定してガス事業を運営している。わずか10社の電力会社が「一般電気事業者」として地域独占の電力事業を展開している状況とは大きく違う。
このほかにガスの導管を維持・管理する「ガス導管事業者」と、大口の利用者にガスを販売する「大口ガス事業者」がある。すでに自由化されている大口の利用者に対しては、3区分の事業者すべてに小売が認められている(図4)。このうち一般ガス事業者は審査が厳しい「認可制」だが、ガス導管事業者と大口ガス事業者は審査が不要な「届出制」で済む。
小売を全面自由化する時点では、業務の内容によって「ガス小売事業者」と「ガス導管事業者」の2つに集約することになりそうだ。電力事業に当てはめると、「小売電気事業者」と「送配電事業者」に相当する。それぞれ認可制か届出制か、あるいは2つの中間で審査が緩やかな「登録制」を適用するのか、今後の検討課題の中でも重要な項目の1つになる。
電力に続いて2020年までに実施の公算
もう1つの重要な検討課題は、料金の規制を撤廃した結果、事業者間の格差が不当に拡大しないようにすることである。現在のガス市場は事業の形態や規模によって4つのグループに分かれていて、上位3社で形成する第1グループが7割のシェアを獲得している(図5)。圧倒的なスケールメリットを発揮できる有利な状態にあるわけだ。
大手よりも規模が小さい第2〜第4グループの事業者は、第1グループの3社を含む他の事業者からガスの供給を受けている。現在は小売の認可料金をもとに、他社に供給する時の料金(電力と同様に「託送料金」と呼ぶ)も決められている。全面自由化で小売の料金規制が撤廃されても、託送料金には規制を残して、公平な競争状態を維持する必要があるだろう。
ガスの小売全面自由化は制度設計を始めた段階で、まだ具体的な実施時期の目標は設定されていない。いよいよ電力の小売全面自由化が2016年に実施できる見通しになってきたことから、同じ一般向けにエネルギーを供給するサービスとして、遅くとも2020年までにはガスの小売全面自由化を実現することが求められる。
これから政府が急ピッチで新しい制度の設計を進めて、2〜3年以内に「ガス事業法」を改正する見込みだ。利用者にとっては電力とガスの選択肢が料金とサービスの両面で増えることになる。
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