エネルギー条例を否決した島根県、「原子力発電からの計画的脱却」を望まず:法制度・規制
全国各地の自治体が再生可能エネルギーの拡大に取り組む中で、自然環境に恵まれた島根県でも木質バイオマスや風力発電の導入が進んでいる。県庁所在地で唯一の原子力発電所を抱える状況からの脱却を目指す新しい条例を県民が直接請求したところ、島根県議会は反対多数で否決した。
島根県の松江市にある市民団体の「島根原発・エネルギー問題県民連絡会」(代表世話人:北川泉・元島根大学長)は2月7日に、県知事に対して「島根県エネルギー自立地域推進基本条例」の制定を直接請求していた。8万人を超える有権者の署名で成立した直接請求だったが、島根県議会は3月11日の本会議で反対多数により否決した。
この条例で目指した主要な点は2つあった。1つは省エネルギーと再生可能エネルギーによる地域自立型のエネルギー社会を構築すること、もう1つは原子力発電から計画的に脱却することである。
国内の原子力発電所の中で、県庁所在地に立地するのは「島根原子力発電所」だけである(図1)。1974年に運転を開始した1号機(46万kW)、1988年に運転を開始した2号機(82万kW)に加えて、新たに3号機(137万kW)を建設中だ。中国電力で唯一の原子力発電所であり、現在は2号機の再稼働に向けて国の適合性審査を受けている。
福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の問題から、周辺地域の住民が再稼働に反対する理由は明確である。しかし原子力発電には国からの補助金を含めてさまざまな利権がからみ、むしろ再稼働を推進する自治体が多い。島根県もその1つであることが条例案の否決によって示された格好だ。
溝口島根県知事は条例制定の直接請求を受けて県議会に議案を提出するにあたり、知事としての意見を加えている。その中で「この条例案で県が策定することを求められている、エネルギー自立のための基本計画を現実的で実効あるものとして策定し、実施することは、困難であると考えられます。」という否定的な見解を示した。
島根県では2008年に「島根県地域新エネルギー導入促進計画」を策定して以降、県のエネルギー計画を見直していない。東日本大震災によって地域のエネルギー事情は大きく変わった。県民に支持される「現実的で実効ある」基本計画を早急に策定することが県知事と県議会に求められている。
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