陰りが見えた風力、2014年は盛り返すか?:自然エネルギー(2/2 ページ)
風力発電市場は2013年に踊り場を迎えた。初めて全世界の市場規模が縮小したからだ。3種類の調査結果によれば、縮小は米国市場に原因がある一時的なものだ。今後は新興国の旺盛な需要によって、規模が拡大していく。太陽電池市場で見られたように、中国の国内市場と中国企業がカギになりつつある。
中国は風車市場にも食い込む
風力発電に欠かせない風車。エネルギー関連とヘルスケアに特化した米国の調査会社であるGlobalDataは、2014年3月、世界市場における風車メーカーの新規導入量ランキングを発表した(図4)。
首位がデンマークVestas Wind Systems、2位がドイツEnerconになったことも重要だが、注目すべきなのは2012年に上位5社に含まれていなかった中国企業、インド企業が、2013年に1社ずつランクインしていることだ。第3位の中国Xinjiang Goldwind Science&Technology(Goldwind)は2012年に第7位だった企業。大幅にシェアを伸ばした。第5位のインドSuzlon Groupは、2012年の6位から浮上している。
中国とインドは勢いがあるアジア市場の中でも、新規導入量1位と2位の国。Goldwindのシェアが拡大した理由として、GlobalDataは中国国内市場向けの数量増が主な要因だと分析した。Suzlon Groupはインド国内の数量増よりも、カナダやドイツ、ポーランド市場向けの増加が著しいという。
なお、2012年に第1位だった米General Electronics(GE Power&Water部門)は、前年比で−80%という大幅な縮小を被り、第6位に落ちた。導入量は980.2MWにとどまる。同じく第5位だったスペインGamesa Corporación Tecnológica は第7位にシェアを下げている。
2014年以降は再び市場規模が拡大する
2014年以降の世界市場の動向については、デンマークの調査会社であるMake Consultingが2014年3月に発表した有償のレポート「Q1/2014 Global Wind Power Market Outlook Update」が参考になる。同社は風力発電分野に特化した調査会社だ。
レポートの概要は3点ある。第1に、2013年から2023年まで10年間にわたり、世界市場が成長し続けることだ。年平均成長率(CAGR)は7.1%と大きい。2014年から2017年までは比較的ゆっくりとしたペースで成長し、その後、2023年まで急成長する。結果として2023年までに581GWもの風力発電設備が新規導入されると予測した。これはGWECが集計した2013年末までの世界累積導入量318GWと比べて1.8倍に相当する数字だ。
このような成長を引っ張るのは、アジア太平洋や中東、アフリカなどの新興市場だ。風力発電は均等化発電原価(LCOE:Levelized Cost Of Electricity)が低いためだという。関連記事で紹介したドイツFraunhofer研究所の分析によれば、既に風力発電は化石燃料を利用した発電所よりも安価で競争力がある。これは発電所の建設から廃止までを含んだコストの比較だ。
第2に2014年の新規導入量は、これまでのどの年の新規導入量よりも大きくなる。2013年の落ち込みは一時的だということだ。米国とブラジルで完成後に系統と接続されていなかった設備が接続されるためだという。2013年比で40%も成長し、新規導入量が48GWに達すると予想した。
第3に同社が注目するのは風力発電システムに対する受注量の変化だ。2013年の受注量は2012年比で45%も増加しており、堅調だ。2013年に市場規模が大幅に縮小した米国が、2013年第4四半期の全世界の受注量のうち23%を占めている。2014年から2016年の市場の成長は、受注残によっても促されると予測した。
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