オランダ型システムとガスエンジン、農業に必要な3つの要素を満たす:エネルギー管理(2/2 ページ)
北海道に「スマートアグリ生産プラント」が立ち上がる。ハウス農業に必要な熱と電力の他、二酸化炭素を供給することで、生産能力を高める方式だ。JFEエンジニアリングとアド・ワン・ファームが取り組み、トマトや葉野菜を生産する。
北海道に第1弾の設備を建設
このような設備を備えた農場「スマートアグリ生産プラント」の建設が、2014年3月、北海道の道央にある苫小牧市苫東工業地域(総面積1万700ha)で始まった(図4)。工業地域の敷地のうち、3.8haを借り受け、10億円*3)を投じ、鉄筋と合成樹脂フィルムで「温室」を作り上げる。2014年7月に完成した後は、約40人の作業担当者が農産物を扱う。
*3) 栽培設備に約6億円、土木・建築に約4億円を振り分ける。栽培設備については農林水産省の交付金約3億の受給を予定している。
苫小牧市を選んだ理由は4つあるという。トリジェネレーションに必要なガスを得やすいこと、夏季に冷涼であること、安価で広大な土地を得やすいこと、優れた物流機能を利用しやすいことだ。
夏季に冷涼なことが条件となるのはなぜだろうか。「栽培を予定しているトマトは気温が30度以上になると生育が難しくなる。加えて豪雪地帯では雪の対策が厳しいため、苫東を選んだ」(JFEエンジニアリング)。生育が難しいとは、実の着色が悪くなり樹勢が落ちることをいう。トマト栽培棟の面積は0.5haだ(図5)。
優れた物流機能が必要な理由は、農作物の輸送に直結するため*4)。「まずは道内に流通させ、余剰分を本州に送る。生産が安定してきた段階で、糖度が高いなど高品質な品種に取り組む(ことで輸送料が負担にならないようにする)」(JFEエンジニアリング)。
同プラントではトマトの他にベビーリーフも栽培する。ベビーリーフとは作物の品種を指す用語ではなく、レタスやホウレンソウなどの葉物野菜のうち、若い葉に相当する段階をいう。「作付け後、2週間で収穫が可能になるため、年に26回収穫できる」(同社)。高付加価値へ進むトマトに対して、ベビーリーフは回転数で勝負する形だ。
*4) 今回のプラントの生産物はアド・ワン・ファームの親会社であるアド・ワンが担当する。
地熱やバイオマス利用の農業も
生産事業の拡大については2期に分けて計画を立てている。第1期は苫東に注力し、栽培技術を蓄積しつつ、独自仕様を確立する。第2期には苫東で多品種生産と規模拡大を目指す。パプリカや水茄子などを考えている。これをパッケージ化し、いわば「マザー農場」として他地域に展開する。まず道内、次いで南東北だという。
JFEエンジニアリングは、農産物の生産事業と合わせてEPC事業の展開も狙っている。ユーザー(企業)の要望に応じて、今回の「農場」の建設を請け負う。運営や販売はユーザーに任せる。「ガスエンジンはもちろん、バイオマスや地熱などをエネルギー源とした低コストなプラントを建設可能だ」(同社)。10haの農場の場合、1件当たり約30億円だという。両事業を合わせて5年後に100億円の売り上げを目指すとした。
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