水力発電:全国で2万を超える候補地、発電コストは火力の2倍:再生可能エネルギーの未来予測(4)(2/2 ページ)
日本の再生可能エネルギーの中で導入量が最も多いのは水力発電だ。大規模なダムを使った旧来型の発電設備に加えて、農業用水路などを活用した小水力発電が活発になってきた。全国各地に導入可能な場所は2万以上もある。ただし発電コストが高めで、今後の拡大ペースを左右する。
発電コストは海外と比べて3倍も高い
膨大なポテンシャルがある水力発電の今後を左右するのは発電コストである。環境省が2011年に調査した時点では、1kWhあたりの発電コストは設備の規模によって大きく変わる。出力が1万kW以上の大規模な設備の場合には平均して10円程度とガス火力並みだが、1000kW以下の小規模な設備になると20円を超えるケースが多い(図5)。
再生可能エネルギーの中では、太陽光やバイオマスよりは低いものの、風力や地熱よりは高めだ。海外の水力発電のコストと比べると3倍くらいの開きがある(図6)。それを前提に現在の買取価格は1kWhあたり24〜34円(税抜き)に設定されているが、制度の開始から4年目の2015年度以降は引き下げられる可能性が大きい。
10年間で新たに150万世帯分の電力
水力発電のコストダウンはどのくらい可能なのか。太陽光をはじめ再生可能エネルギーの発電設備は、市場の拡大に伴って製造量が増えて価格が低下していく。ところが水力発電のうち規模が小さい設備になると、設置する場所によって最適な構造の水車を選ぶ必要がある。代表的な水車の方式だけでも10種類くらいある。ほかの再生可能エネルギーと比べてコストダウンを図りにくい状況だ。
今後の買取価格と発電コストの推移によって、水力発電の導入量は大きく違ってくる。環境省は2050年に向けて3つのパターンのシナリオを想定している。最高のケースでは発電可能な約1400万kWがすべて実現する一方で、最低のケースでは10年間に50万kWずつしか増えていかない(図7)。
実際には2012年7月〜2013年12月の1年半で24万kWの発電設備が買取制度の認定を受けていることから、10年間で50万kWの規模は相当に低いレベルと考えられる。中間のシナリオを想定すると、2020年までに200万kW、2030年までに400万kWが新たに運転を開始する。10年ごとに150万世帯分の電力が追加されていくことになる。クリーンなエネルギーを着実に増やす手段として、水力発電に取り組む意義は大きい。
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