風力発電が半島から沖合へ、32基の大型風車を太平洋上に展開:エネルギー列島2014年版(2)青森
風力発電の導入量が全国トップの青森県で新たな開発プロジェクトが活発になってきた。中心地は下北半島の六ヶ所村で、太平洋岸の陸上に19基、洋上に32基の風車を設置する計画が進行中だ。近隣の湖や沼には貴重な動植物が生息することから、環境保護の面でも先進的な取り組みが求められる。
斧のような形をした下北半島の太平洋側で2つの風力発電プロジェクトが進んでいる。すでに77基の大型風車が稼働中の六ヶ所村に、さらに51基の発電設備が加わる壮大な構想だ。建設場所は臨海工業地帯の中心になる「むつ小川原(おがわら)港」の周辺の陸上と洋上である(図1)。
特に注目が集まるのは洋上風力で、現時点で明らかになっているプロジェクトでは日本で最大の発電規模になる。むつ小川原港をはさんで海岸線から1〜2キロメートルの沖合2カ所に、32基の風車を設置する計画だ(図2)。
1基の発電能力は2.5MW(メガワット)を予定していて、合計すると80MWになる。陸上を含めても日本最大の「新出雲風力発電所」(島根県)の78MWを上回る。
洋上風力の場合には設備利用率(発電能力に対する年間の発電量)が陸上よりも高くて30%程度を期待できるため、年間の発電量は2億kWhを超える見込みだ。一般家庭の電力使用量に換算して約6万世帯分にのぼり、六ヶ所村の総世帯数(4600世帯)の12倍以上になる。固定価格買取制度で新設された洋上風力の買取価格(1kWhあたり36円)を適用すると、年間の売電収入は70億円に達する。
すでに建設予定の海底ではボーリング調査が始まった。順調に進めば2年後の2016年に設置工事に入り、2018年に運転を開始できる予定だ。地元の建設会社が中心になって設立した特定目的会社の「むつ小川原港洋上風力開発」が発電事業を担う。総事業費は300億円を想定している。
当面の課題は環境影響評価の手続きをクリアできるかどうかだ。むつ小川原港の周辺には数多くの湖や沼があって、さまざまな鳥類が生息する(図3)。大型風車は直径が100メートルを超える大きさになり、回転中に鳥が衝突してしまう可能性がある。この問題を回避できなければ、発電事業の縮小や中止を迫られかねない。綿密な環境影響評価を実施して、地元の自治体や住民のほかに環境保護団体の理解も得る必要がある。
青森県は日本の中でも特に風況に恵まれている。風力発電に必要とされる年間平均風速5.5メートル/秒を超える場所が県内に広く分布する(図4)。周辺に住宅がない山間部や沿岸部には風力発電設備を建設できる余地が多く、加えて2つの半島を囲む近海の洋上も有望だ。
これまでに固定価格買取制度で認定された設備の規模を見ると、すでに運転中の風力発電では青森県が第1位である(図5)。未稼働の設備を含めると発電能力は117MWになり、秋田県(202MW)と三重県(130MW)に次いで第3位につけている。今後も自然環境との共存を図ることができれば、青森県の風力発電はまだまだ増えていく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −北海道・東北編 Part1−」をダウンロード
2016年版(2)青森:「風力発電の導入量が全国1位、日本最大のメガソーラーも動き出す」
2015年版(2)青森:「再生可能エネルギーと原子力が共存、半島に集まる巨大な発電所」
2013年版(2)青森:「風力発電で先頭を走り続ける、六ヶ所村に並ぶ大型の風車と蓄電池」
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