太陽の熱で風を作って発電、米国南部に高さ686メートルのタワー:自然エネルギー
太陽熱と風力を組み合わせた発電所の建設が米国アリゾナ州で始まる。高さ686メートルの円筒形のタワーの最上部で太陽熱によって空気を温めて、冷却水を噴射して下降気流を作り、タワーの最下部に並べた風車を回転させて発電する。計画では60万kW級の火力発電所に匹敵する発電量になる。
米国のソーラー・ウインド・エナジー・タワー社が商用レベルで世界初の「太陽-風力下降気流タワー」を開発して、南部のアリゾナ州に第1号の発電所を建設する(図1)。米国とメキシコの国境にあるサンルイス(San Luis)市で4年後の2018年に運転を開始する予定だ。
サンルイス市に建設する発電所はタワーの高さが686メートル(2250フィート)で、1時間あたり最大で125万kWh、平均で43.5万kWhの電力を供給することができる。総発電量は1年間で38億kWhに達する。火力発電所の発電量と比べると大規模な60万kWクラスに相当する。
この発電設備の特徴は太陽熱と風力を組み合わせたハイブリッド方式にある。円筒形のタワーの最上部では太陽光による熱で空気を温める一方、タワーの内部にある噴射システムから冷却水を霧状に放出する。温かく乾いていた空気が蒸気を吸収して冷たく重くなると、時速80キロメートル(秒速22メートル)以上の速さでタワーの下部に向かって落下していく。
タワーの最下部には風車が多数並んでいて、下降気流が風車を高速で回転させて発電する仕組みだ(図2)。一般に風力発電では秒速5メートルを超えることが条件とされているが、このタワーの下降気流は4倍以上の風速を生じる。発電能力は太陽光の日射状態によって変わり、平均で35%程度の発電効率になる。
開発したソーラー・ウインド社によると、発電コストは火力並みに低く、従来の太陽光発電や風力発電と比べて3分の1程度で済む。サンルイス市のプロジェクトを契機に、米国の南部やメキシコのほか、北アフリカなどの日射量が豊富な地域に発電所を展開していく計画だ。
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