火力発電のCO2排出量が米国で15%以上も低減、2030年には30%減へ:法制度・規制
米国の環境保護局がCO2排出量の低減に向けて、発電設備の効率改善などを推進するガイドラインを全米各州に提案した。火力発電に対してCO2排出量の規制を設けて、全米で2030年のCO2排出量を2005年よりも30%削減するのが目標だ。すでに2012年の時点でも削減率は15%を超えている。
オバマ大統領による地球温暖化対策の強化方針を受けて、米国の環境保護局(EPA)が発電設備のCO2排出量を低減するためのガイドラインを6月2日に発表した。米国では2012年のCO2排出量のうち84%をエネルギーが占めていて、自動車と電力が主な発生源である。エネルギー分野のCO2排出量は2005年から12%も減っているが、さらに国を挙げて大幅に削減していく方針だ(図1)。
火力発電によるCO2排出量を見ると、2005年から2012年の7年間で15%以上も減少した。ただし依然として全米の総排出量の3分の1以上にのぼることから、一段と厳しい低減策を推進する。火力発電の中では石炭のCO2排出量が圧倒的に多く、最も重要な削減対象になる(図2)。
EPAが全米各州に提案したガイドラインによると、4つの対策を組み合わせて、全米の発電設備におけるCO2排出量を2030年までに2005年比で30%削減させる。4つの対策は、1.火力発電設備の熱効率改善、2.高排出量の設備から低排出量の設備への移行、3.再生可能エネルギーや原子力の導入拡大、4.需要側の効率改善、である。
このうち火力発電設備の熱効率改善については、石炭火力とガス火力ともにコンバインドサイクル方式を推奨して、発電量あたりのCO2排出量を数値で規制する。EPAは全米各州に対して、ガイドラインに基づく規制案を1年後の2015年6月1日までに作成するよう提案した。それをもとに2020年から対策を実施して、2030年までにCO2排出量を削減する。
米国では古い石炭火力発電設備が数多く残っていて、2025年には平均稼働年数が49年に達する。こうした老朽化した発電設備を最新鋭のコンバインドサイクル方式に更新すれば、CO2排出量を大幅に削減できる。EPAが全米各州に提案したことにより、今後は石炭火力発電設備の更新が活発に進んでいく見込みである。
全米の発電設備の規模を電源別に見ると、過去10年間にガス火力と再生可能エネルギーが増加する一方、そのほかの石炭・石油火力、水力や原子力はほとんど変化していない(図3)。この間に石炭火力のCO2排出量は20%以上も減っていて、CO2排出量を削減する対策が着実に効果を上げていることをうかがわせる。
日本でもガス火力と石炭火力の分野で高効率化の取り組みが進んでいる。環境省と経済産業省は最先端の火力発電設備の技術仕様をBAT(Best Available Technology)として年に1回とりまとめて、発電設備を新設する場合の基準として推奨している。今後も米国と日本が世界をリードして火力発電のCO2排出量を低減していくことになる。
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