気温40度でも問題なし、アラブの砂漠にエネルギー都市:スマートシティ(4/4 ページ)
アラブ首長国連邦(UAE)が2006年に発表した化石燃料を使わないゼロカーボン都市「マスダールシティ」。世界同時不況のあおりを受け、当初の予定通りには進捗していない。しかし、中東で最もエネルギー効率の高いビルや、大規模な太陽熱発電所など、少しずつ計画が実を結び始めている。高温環境下でのスマートシティとはどのようなものなのか、現状を紹介する。
使いやすい公共交通機関を追求
マスダールシティの公共交通機関は、そもそものあるべき姿を追求している。そこに最新の技術を組み合わせた。
あるべき姿とは利便性のことだ。市内のどの位置からでも200m歩くだけで公共交通機関を利用できるように設計されている。自転車やセグウェイも併用する。
マスダールシティではガソリンで動く自動車の使用が認められていない。2種類の電気自動車が代わりに使われている。1つが個人用高速輸送機関(PRT)、もう1つが電気自動車(三菱自動車のi-MiEV)の実験的な利用だ。「世界初のゼロエミッション交通網」を自称する。
PRTは運転手のいないタクシーとして機能する(図7)*4)。車内には行き先などを入力するタッチパネルがあるだけで、ハンドルなどは備わっていない。大人4人、子ども2人が乗車でき、最高時速40kmで走行する。各PRTは走行ルートの地図を内蔵し、車輪の回転数を利用して移動距離を積算する他、道路に格子状に埋め込まれた小さな永久磁石によって、位置をキャリブレーションする仕組みを持つ。もともとはフォークリフトの無人運転のために開発された技術(FLOG technology)を利用している。
*4) ただし、1台当たり日本円に換算して1600万円ほどの費用を要するため、導入規模は現時点で1.2kmに限られている。PRTの代わりに次世代路面電車システム(LRT)の導入が検討されている。
卓越した再生エネ技術を表彰
アラブ首長国連邦政府は、世界各地の優れた再生可能エネルギー技術や持続可能性を高める技術を表彰する「ザイード・フューチャー・エネルギー賞」(Zayed Future Energy Prize)を設けている。運営するのはアブダビMasdarだ。アブダビを再生可能エネルギー研究のハブとして確立しようとする試みの1つといえる。
1年に1回、総額400万米ドルの賞金を5つの部門に与えている。対象部門は大企業(功労賞)、中小企業(賞金150万米ドル)、非政府組織(150万米ドル)、生涯功労賞(50万米ドル)、グローバル高校賞(5地域に最大10万米ドルずつ)。
図8は2013年にグローバル高校賞(欧州)を受賞した英Okehampton Collegeが計画した2基の風車の1つ。風車とバイオマス暖房を併用し、固定価格買取制度(FIT)を利用することで、ゼロエネルギーの高校を作り上げる計画だ。
ザイード・フューチャー・エネルギー賞は日本の企業や高校、個人からの応募も受け付けている。応募と推薦の締め切りは2014年7月14日。
【訂正】 記事の掲載当初、4ページ目第5段落で「Zayed Future Energy Prize」の表記が間違っておりました。第6段落では「グローバル高校賞(5地域に10万米ドルづつ)」としておりましたが、これは「グローバル高校賞(5地域に最大10万米ドルずつ)」の誤りでした。お詫びして訂正いたします(2014年6月4日)。
関連記事
- 灼熱の国に向く再生可能な「太陽熱発電」、数百MWが可能
複数の手法がある - 太陽熱を最も使っている国は?
中東以外に東アジアも適地 - 世界最大の洋上風力発電所、その送電事業を取得した三菱商事の狙いとは
マスダールが20%を出資 - 目指すは全てが「0」の世界、未来の建物が実現
日本国内での先進的な取り組み
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.