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アミノ酸から電力を作る、食品工場の副生物でバイオガス:スマートファクトリ
味の素は佐賀市と共同で、調味料などを製造する工程で発生する副生物を利用したバイオマス発電の研究を開始する。アミノ酸を発酵させた液体から肥料を作る取り組みを応用して、メタンガスによるバイオマス発電の実用化を目指す。
佐賀市にある味の素の九州事業所は、世界で最大級のアミノ酸の発酵工場だ。主力商品の調味料を製造するために、澱粉(でんぷん)や糖類を発酵させてアミノ酸を作る。その工程でアミノ酸を含んだ液体が副生物として残り、農作物の肥料などに再利用することができる(図1)。
この肥料の製造事業を佐賀市の下水浄化センターと共同で進めてきた(図2)。下水浄化センターでは下水の処理過程で大量の汚泥が発生する。汚泥を原料にしてアミノ酸の副生バイオマスを加えることにより、農作物の品質向上が期待できる。実際に地域の農家に販売して成果を上げている。
さらに副生バイオマスの利用範囲を拡大するために、共同で発電事業に取り組む計画だ。副生バイオマスからメタンガスを作り出して発電に利用する。すでに佐賀市の下水浄化センターでは、汚泥の処理に伴って発生する消化ガスを燃料にしたバイオマス発電を実施している(図3)。
現在の発電設備は400kWの電力を供給する能力があり、年間の発電量は340万kWhになる。浄化センターの電力源に利用して約4割の電力をまかなっているが、日本で初めての電力自給率100%の下水処理システムを目指して発電設備を増強する計画がある。その燃料に味の素の副生バイオマスを活用する。今後2年程度をかけて実用性を検証しながら、2016年度に発電を開始できる見通しだ。
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