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「NAS電池」を3000kW導入、国内で3年ぶり蓄電・発電機器(2/2 ページ)

日本ガイシは独自の蓄電池である「NAS電池システム」を3年ぶりに国内向けに納入した。納入先は医療用医薬品メーカーであるマルホの彦根工場。マルホの目的は3つ。瞬低対策、非常電源、電力負荷平準だ。1000分の5秒で最大出力に達し、そのまま7時間以上動作する。通常時はピークカットに役立つ。

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NAS電池はどうやって動く?

 NAS電池は蓄電池の一種であり、寿命が15年と長いことに特徴がある。充電後に次第に電力量を失う自己放電も起こさない。さらにエネルギー密度はリチウムイオン蓄電池と同水準にある。日本ガイシによれば、電力量(kWh)当たりのシステム価格はリチウムイオン蓄電池よりも安い。ただし、内部を常時高温状態に維持しなければならないため、小型化するよりも、大型の定置用途に向く。

 NAS電池の構造を図3に示した。NAS電池システム(図左)は多数のモジュール電池(図中央下)からなり、モジュール電池には単電池セル(図中央)が多数格納されている。単電池セルの長さは数十cm。


図3 NAS電池システムの構造 出典:日本ガイシの複数の発表資料を編集

 単電池セルの構造を図右に示した。NAS電池のNASとは、ナトリウム(Na)と硫黄(S)を表す。中心部の負極側にナトリウムを、周辺部の正極側に硫黄を入れている。単電池セルは約300度に保たれているため、どちらも液体だ。

 ナトリウムと硫黄はベータ・アルミナ(Na2O・xAl2O3)で作られた管で区切られている。ベータ・アルミナ管の役割は、リチウムイオン蓄電池でいう「セパレーター」と似ている。完全な固体でありながら、単電池セル内のナトリウムイオン(Na)のみを通す性質がある(固体電解質)。リチウムイオン蓄電池ではリチウムイオンが移動するために溶媒(電解液)が必要だが、NAS電池では溶媒は不要だ。NAS電池のエネルギー密度が高い理由の1つは、溶媒を必要としないことにある。

 放電時は負極側のナトリウムがイオンとなって電子を放出後、正極側に移動して硫黄と結合し、多硫化ナトリウムになる。放電時の電池全体の反応は次の通りだ*4)。2Na+xS→Na2Sx。充電時の反応は矢印の方向が逆向きになる。

*4) xの値は充放電の状態によって変化し、3〜5の値をとる。放電時の正極側の反応は、xS+2e→Sx2−。負極側の反応は、Na→Na+e

【更新履歴】 1ページ目の第2段落の後ろに設置面積に関する段落を追加しました。(2014年8月7日更新)

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