日本初の下水熱利用、さらに性能高める東京:自然エネルギー(2/2 ページ)
1994年に運用が始まった東京下水道エネルギーの地域冷暖房システムは設備が劣化してきている。そこで2013年から2017年までの4年間、新システムを開発、導入して省エネルギー性能を高める。2013年度の成果を紹介する。
まずは蓄熱槽の性能アップ
図1に示した性能を実現するために、4つの実証項目を打ち出し、期間全体にわたってデータを収集して分析する。2013年度に実証したのは、項目1。項目1では蓄熱槽周囲の断熱防水材を更新し、断熱効果と防水効果を高め、放熱ロスを減らす。
改修前の状況を図2に示す。薄いグラデーションの赤で示したのが温水。その周囲の破線が防水層。濃い灰色が断熱層、灰色が躯体(くたい)だ。蓄熱槽内部に48.8度の温水を貯めた場合、改修前には蓄熱ロスが311GJ/年に達していた。これは熱貫流率(熱の通りやすさ)が1.740W/m2/Kと高かったからだ*3)。
*3) 2013年度は3つの蓄熱槽のうちT-1槽(容量300m2)のみを改修した。図2にある蓄熱ロスや熱貫流率の値は劣化を含んだ実績値だ。劣化前の仕様値は、蓄熱ロス64GJ/年、熱貫流率0.360W/m2/Kというもの。なお、改修以前の仕様値と比較しても、図3に示した改修後の数値を見ると、蓄熱ロスが約41%減っている。
これが改修後には図3のように性能が高まった。熱貫流率が約8分の1の0.208/W/m2/Kに下がったため、蓄熱ロスを38GJ/年に抑えることができた。
今後はシステム化で性能向上
残る3つの実証項目では制御システム側を改善する。項目2では、低負荷時期の供給冷温水温度差が減ってしまう問題に対応するため、「熱媒過流量制御システム」を作り上げる。
項目3では項目1と項目2を組み合わせて、「下水熱利用統合化熱源制御システム」を開発する。プラント全体としてエネルギー効率を高めるためだ。さらに民間の気象情報を利用するサブシステム開発にも取り組む。下水温度予測と蓄熱槽運用予測、熱需要予測が目的だ。
項目4では再生エネルギー熱源水取水ポンプ制御と熱源機負荷率制御を連携した制御システムを開発する。未処理下水が持つエネルギーを最大限に引き出すためだ。以上の4つの実証項目の目標と評価内容を図4に示した。
4つの実証項目に関係する工事が全て完了する2017年以降の実証システムの姿を図5に示した。図には4つの実証項目の位置付けも描かれている。
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