北海道で初のLNG火力発電所、2018年度の営業運転に向けて工事開始:電力供給サービス
北海道電力にとってLNG(液化天然ガス)を燃料に使う初めての火力発電所の建設工事が小樽市で始まった。合計3基の発電設備のうち、最初に稼働する1号機の工事を当初の予定よりも2カ月早く開始した。1号機の営業運転は2019年2月を予定しているが、同様に早まる可能性が大きい。
電力会社が燃料費とCO2排出量の削減を目指して、効率の良いLNG(液化天然ガス)を燃料に使える火力発電所の増強を進めている。北海道電力も初めてのLNG火力発電所を小樽市の石狩湾新港に建設するために環境影響評価の手続きを進めてきた。2014年4月に手続きが完了したことを受けて、8月18日に工事を開始した(図1)。
新たに建設する「石狩湾新港発電所」はLNG火力発電では最先端のコンバインドサイクル方式を採用する。1基で57万kWの発電能力があり、発電所全体では3基の構成で171万kWの規模になる予定だ。米GE(ゼネラルエレクトリック)と東芝が開発した最新鋭のガス火力発電設備を導入して、最高で62%の熱効率(低位発熱量ベース)を発揮する。
3基のうち最初の1号機を建設するために必要な土木造成工事や地盤改良工事から着手する。当初の計画では10月から工事に入る予定だったところを2カ月ほど早めた。営業運転までに52カ月(4年4カ月)かかる見込みで、順調に進めば2018年末にも電力の供給を開始できる。冬の電力需要が大きい北海道電力にとっては供給力の増強と燃料費の削減につながる。
現在の北海道電力の火力発電所は石油と石炭を燃料に利用する設備しかなく、特に石油は価格が高騰して燃料費の増加をもたらす大きな要因になっている。運転開始から40年以上を経過している発電設備も多く、熱効率は30%台にとどまる。石狩湾新港発電所が営業運転を開始すれば、老朽化した火力発電所を閉鎖することが可能になる。
北海道電力は1号機に続いて2号機の工事を2018年に、3号機の工事を2024年に開始することにしている。営業運転は2021年12月(2号機)と2028年12月(3号機)の計画だが、いずれも前倒しする可能性が大きい。
石狩湾新港発電所で使用するLNGは、隣接する北海道ガスのLNG基地からパイプラインで引き込む(図2)。1号機の工事と並行して2015年度中にパイプラインの敷設工事も開始する予定だ。
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