「無駄なガス」電気に変わり利益生む、下水を使う鶴岡市:自然エネルギー(2/2 ページ)
山形県鶴岡市は市内の下水処理場が生み出す「消化ガス」の利用に取り組む。水ing(スイング)と契約し、消化ガスを販売、得た利益を下水道の維持管理に全額用いる。水ingはガス発電機を導入し、固定価格買取制度を利用して収益を得る。市と事業者のどちらにもメリットがある事業だ。
ガスの条件は比較的安定
鶴岡市によれば、2013年度の消化ガス発生量は、1日当たり平均3365Nm3。最低量は平均量の64%、最大量は118%だった。
「ガスに含まれるメタンの濃度は実測値で59〜60%(図4)であり、今回の公募では55%でも運転可能な設備を条件としていた。ガス発電では不純物として含まれる硫化水素とシロキサン*2)が発電機に悪影響を与える。市側では脱硫後のガスを供給する。シロキサンの除去は事業者側にまかせる」(同センター)。
*2) シロキサンはシャンプーや化粧品に含まれる保湿成分。ガスエンジン内で燃焼すると固体のシリカ(SiO2)に変わり、摩擦や閉塞を起こし、エンジンなどの部品の寿命を短くする。
「消化ガスは下水の量に依存する。今後は人口減が見込まれるため、ガスの量が減る可能性がある。販売量を維持し、さらには増やしたい。鶴岡市はこれまでの市町村合併によって(下水処理関係の)施設が複数ある。これらの下水を利用して供給量を増やしていく予定だ」(同センター)。ガス単価は契約によって固定されているため、供給量が増えた分だけ販売額が増える。
2015年3月末までに水ingが設備認定と接続契約を終え、2015年9月末までに設計・施工を完了する。発電事業は2015年10月から2035年9月の期間を予定している。
【訂正】 記事の掲載当初、1ページ目第3段落で「これまでほぼ全量を焼却処分していた」としていましたが、これは「これまで一部を消化槽の加温に使い、残りを焼却処分していた」の誤りでした。同第8段落で「雑草が生えているだけの未利用地」としていましたが、これを「現在は未利用地」としました。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。(2014年8月28日)
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