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ヘラクレスの「戦い」を覚悟したドイツの野望と痛み、日本はどうか:小寺信良のEnergy Future(3/5 ページ)
原発全廃の方針や、太陽光発電・風力発電の勢いばかりが伝わってくるドイツのエネルギー事情。だが、石炭と原子力の組み合わせから幾分なりとも脱却するには20年以上の取り組みが必要だった。ドイツで熱関連の住宅設備に取り組むスティーベルエルトロン(Stiebel Eltron)、その共同オーナーであるウルリッヒ・スティーベル博士に、企業から見たドイツのエネルギー政策とドイツの実情を聞いた。
家庭を変える、家庭が変わる
以前、日本とドイツの最終エネルギー消費の部門別構成比を調べたことがある(図5、関連記事)。これは両国のどの部門で、省エネ化が進んでいるのかを表わしたものだ。これによれば、ドイツのこれからの課題は、家庭で消費されるエネルギーロスにあることがわかる。
ドイツでは、住宅の屋根に太陽電池モジュールを設置して発電する場合、FITを利用して買い取りしてもらう方が有利だった。太陽光発電の原価が高かったからだ。しかし太陽光発電の原価が年々急速に下がり、一方で電気料金は徐々に高騰していった。その結果、2012年に「価格」が逆転。その後は屋根の上で発電した電力を家庭内で消費した方が得になった(図6、関連記事)。
この状況が鍵になる。太陽光発電の導入量が増えると、日中、膨大な売電が集中し、電力系統に負担がかかるため好ましくないという議論がある。ドイツはその先に進んでいる。
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