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水素を「水」から作り出す、四畳半のステーション電気自動車(2/2 ページ)

ホンダは2014年9月、さいたま市、岩谷産業と共同で燃料電池車に水素を供給する独自の水素ステーションを設置した。特徴は2つ。水と電気だけを用いて、その場で水素を製造できること。ステーション全体を1つの小規模な「箱」に収めたこと。水素ステーションの大量普及に備えた形だ。

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独自の高圧水電解システムが強み

 「当社が開発・製造した『高圧水電解システム」の他、複数の部品を用いて岩谷産業がパッケージを製造した」(ホンダ)。つまり、ホンダの強みは高圧水電解システムにある。水を電気分解して水素を製造する装置だ。

 特徴は常圧の水を注入して、35気圧(35MPa、メガパスカル)の水素を直接得ること。製造した水素を高圧タンクに蓄積する際、コンプレッサーで圧縮する必要がない。同社が2010年に発表した研究結果によれば、太陽電池で電力を得て、加圧しない通常の水電解システムで水素を製造すると、得た電力量のうち、約20%をコンプレッサーと除湿用のヒーターで使うことが分かったという*2)。これは電気分解の際に無駄になる電力量よりも大きい。

*2) 「ホンダのソーラー水素ステーション(SHS)開発の取り組み」、水素エネルギー協会機関誌、Vol.35 No.3(2010)「水素ステーションの現状と課題」

充填時間は3〜4分

 パッケージ型スマート水素ステーションは24時間に1.5kgの水素を製造可能だ(図4)。これはFCXクラリティが約150km走行可能な量だ*3)。パッケージ内には蓄圧タンクが8本内蔵されており、35MPaの水素を最大約18kg、貯蔵できる。蓄圧タンクだけで3台のFCXクラリティを満タンにできる計算だ。

*3) ホンダFCXクラリティ(ZBA-ZC3)は4人乗りのセダン。高圧水素タンク(35MPa)の容量は171Lであり、航続距離は620km(10・15モード時)。


図4 スマート水素ステーションの主な仕様 出典:ホンダ

 「FCXクラリティーの水素タンクが空の状態から3〜4分で満タンになる」(ホンダ)。充填速度は他社の水素ステーションと変わらない(図5)。ただし、多くの競合他社は70MPaを最大充填圧としている。「70MPaのタンクを備えた他社の燃料電池車に今回の装置で充填した場合、満タンにはならないものの、60数%までは達する」(ホンダ)。圧力は半分だが、5割以上充填できるということだ。


図5 水素注入のためのノズル 出典:ホンダ

普及への課題は何か

 パッケージ型スマート水素ステーションを利用すれば、小面積の土地に短時間で水素ステーションを設置できる。設置期間が短いことは、設置コスト引き下げにも効く。残る課題は何だろうか*4)

 適用法規だ。「商業地に水素ステーションを設置する場合、防火壁や散水栓など(過大な)規制が多い。関係省庁に規制適正化を求める必要がある」(ホンダ)。市街地に設置できるよう、岩谷産業とともに実証実験を重ねていくとした。なお、今回の設置場所は商業地ではないため、半径5m以内に火気が存在しないなどのわずかな規制しか掛かっていないという。

*4) この他、水素の製造コストが課題になる。化学工業の副産物である副生水素などを運び込む場合と比較して、(再生可能エネルギーによる)電力を用いた水電解はコストが高いとされている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2014年7月に公開した「水素エネルギー白書」では、製造法ごとの水素の製造コストをまとめている。苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)製造の副成水素は20円/Nm3、石油精製時では23〜37円、水の電気分解(水電解)では76〜136円だという(関連記事)。なお、ホンダは水素の製造コストを公開していない。

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