太陽熱を集めて蒸気で発電、曇りの日や夜でも電力を供給できる:自然エネルギー
日本でも30年以上前に国家プロジェクトで取り組んだことのある太陽熱による発電技術に再び注目が集まっている。太陽熱で蒸気を発生させて発電する方式で、太陽光発電よりも日射量による出力の変動が小さく、熱を蓄えて曇りの日や夜間でも発電できる。2016年に横浜市で試験運転が始まる。
新たに太陽熱発電に挑むのは三菱日立パワーシステムズとバブコック日立のグループである。環境省から「平成26年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に選ばれて、2014年度内に実証事業を開始する。開発する太陽熱発電システムは多数のミラーを使って集めた太陽熱で蒸気を発生させる方式である。
三菱日立グループは2種類の集光・集熱方法を組み合わせたハイブリッド方式による「HSTS(Hybrid Solar Tower System)」の実用化に取り組む。横浜市にある三菱日立パワーシステムズの横浜工場の構内にHSTSの検証設備を建設して、2016年に試験運転を開始する予定だ(図1)。
HSTSでは細長い集光ミラーと集熱管を使って蒸気を発生させる「フレネル型」と、長方形のミラーで反射させた太陽光をタワーの上部に集めて加熱させる「タワー型」の2方式を併用する。水から蒸気を発生させて300度の温度まではフレネル型を利用して、それ以上の高い温度に加熱する工程をタワー型で実行する仕組みである。あとは通常の火力発電と同様に高温の蒸気でタービンを回転させて発電することができる。
太陽熱発電は現在のところコストが高いことから国内では実用化に至っていない。三菱日立グループは2種類の集光・集熱方式を併用することによって、従来よりも小規模な設備を開発してコストダウンを図る方針だ。さらに蓄熱システムと組み合わせて発電量の平準化にも取り組む。
太陽熱は日射量によって変動するが、溶融塩などの媒体を利用して高温のまま蓄熱システムに貯蔵することができる。その熱を使って曇りの日や夜間でも蒸気を発生させて発電することが可能になる。太陽電池を利用する一般的な太陽光発電システムが晴天の日中にしか発電できないのと比べると、太陽熱発電は安定した電力を供給できる利点がある。
かつて国内でも1981年に香川県の仁尾町(現・三豊市)に1MW(メガワット)の太陽熱発電システムを国家プロジェクトで建設したことがあったが、結局は失敗に終わったまま実用化は進んでいない。太陽熱発電システムの最大の課題であるコストの問題を解消できれば、天候の影響を受けにくい再生可能エネルギーとして発展する可能性を秘めている。
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