「電気自動車・蓄電池・太陽光」、離島で作るエネルギーの環:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市と住友商事は、離島に再生可能エネルギーを普及させるための環境整備に共同で乗り出す。九州の南西に浮かぶ上甑島(かみこしきじま)に、電気自動車「リーフ」のリユース蓄電池を大量導入。太陽光発電と合わせて系統に接続する共同実証事業を始める。
蓄電池に実績がある住友商事
同市が住友商事を選んだ理由は、大規模蓄電池について実績があるからだ。同社は日産自動車と共同で共同事業会社フォーアールエナジーを設立。2014年2月には大阪市の湾岸地域にコンテナ型の蓄電池を設置している(関連記事、図3)。
大阪市で利用した蓄電池は、日産自動車「リーフ」が搭載するリチウムイオン蓄電池のリユース品。リーフ16台分を設置した。システムの規模は出力0.6MW、容量0.4MWhというもの。電気自動車(EV)の蓄電池を再利用した大型システムの実用化として世界初の試みだという。
太陽光発電と組み合わせる
上甑島の2カ所に蓄電池システムを導入する。「指定避難所隣接地」には、リーフ36台分に相当する大型リユース蓄電池(容量約600kWh)を導入する。出力約100kWの太陽光発電システムとも組み合わせる。
「老人福祉センター」にはリーフ1台分の約17kWhのリユース蓄電池を導入、併設する太陽光発電システムの出力は約10kWだ。「指定避難所隣接地は規模が大きいため、蓄電池を島内の系統と接続する。老人福祉センターは系統から独立した構成にする」(住友商事)。
「大型リユース蓄電池の形状は大阪市の事例とほぼ同じで、コンテナ型だ。リユース蓄電池の規模は小さいので、違う形状である」(同社)。運転開始後はフォーアールエナジーが開発した電力マネジメントシステムで常時出力を監視して、動作を制御するという。
蓄電池の導入によって、甑島の環境はどのように変わるのだろうか。走行距離が短くても済む離島では、島内でエネルギーを自給できるEVが向いているだろう*2)。EVのリユース蓄電池が増えてくれば、再生可能エネルギーをより大量に導入できるようになる。つまり再生可能エネルギーの環が完成するのではないだろうか(図4)
*2) 薩摩川内市(本土側)には原子力発電所が立地するものの、同市は太陽光発電などの再生可能エネルギー導入にも熱心だ。策定した次世代エネルギービジョンに従って再生可能エネルギーのモデルを複数作り上げている(関連記事)。甑島に対してはEVレンタカーや超小型モビリティの導入などを進めている。
大型リユース蓄電池の導入によって、島内の他の太陽光発電所の出力変動をどの程度吸収できるのか、今回の共同実証事業を進めていくなかで検証する。なお、大阪市の事例では10MWの太陽光発電所に対して、0.6MWの出力変動分を吸収できるという予測を立てている。
関連記事
- 1200年の歴史がある鹿児島の離島に電気自動車、太陽光との組み合わせなるか
甑島への導入事例 - 電気自動車に搭載した中古の蓄電池、メガソーラーの隣で出力安定に生かす
大阪に蓄電池を設置した事例 - サムスンと組んで国内を制覇か、太陽光発電所+大容量蓄電池
エジソンパワーが進める事業 - プリウスの使用済み蓄電池を定置型に再利用、4月に発売
容量は10kWh - 南国の離島に豊富な自然エネルギー、火力依存からの脱却を図る
連載:エネルギー列島2013年版(46)鹿児島
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.