太陽熱と地下水で駅前の再開発地域に冷暖房、CO2排出量を45%も削減:スマートシティ
東京の中心部を循環するJR山手線・田町駅前の再開発地域に、最先端のエネルギー技術を集約した熱と電力の供給システムが運転を開始した。地域の冷暖房に太陽熱と地下水を利用するほか、ガスコージェネレーションを使って太陽光発電の出力変動にも対応することができる。
東京ガスが東京都の港区と連携して2012年から開発を進めてきた「スマートエネルギーネットワーク」が11月1日に稼働して、地域内の施設に熱と電力の供給を開始した。場所はJRの田町駅から直結する再開発地域で、2万8000平方メートルの敷地に公共公益施設や病院、ホテルやオフィスビルを集めたスマートシティを建設する計画だ。
この再開発地域に再生可能エネルギーとガスコージェネレーションを組み合わせた最先端の熱と電力の供給ネットワークを構築する。中核になる「第1スマートエネルギーセンター」(図1)には、地域全体の熱と電力の需給状況を最適に制御するエネルギー管理システムを導入した。
冷暖房用の熱源には再生可能エネルギーを最大限に活用する。駅と各施設を結ぶ歩行者デッキの屋根に太陽熱の集熱パネルを設置したほか、年間を通して温度変化の少ない地下トンネル水の熱を吸収するシステムも備えている(図2)。太陽熱の集熱パネルは288平方メートルにわたって設置した。さらに太陽光発電システムを施設の屋上などに設置して電力源に利用する。
電力源の主力になるのはガスコージェネレーションである。停電時にも運転を続けられるガスコージェネのシステムを3台導入して、合計845kWの電力を供給することができる。地域内の太陽光発電の出力が天候によって変動しても、ガスコージェネの電力で補完して送配電ネットワークへの影響を抑えることが可能だ。
ガスコージェネは耐震性能の高い中圧ガス管から都市ガスを送り込む方式で、災害などの非常時には病院を優先して熱を供給する仕組みになっている。病院の熱需要が最大の状態で続いても、72時間は熱の供給を継続することができる。一方で非常時の電力は公共公益施設の空調と照明を優先させる。
東京ガスは開発中の西側エリアにも「第2スマートエネルギーセンター」を建設する計画で、第1センターと合わせて地域全体のエネルギーを最適に制御できるようにする(図3)。第1センター単独の場合と第2センターと連携した場合のどちらでも、1990年当時の施設と比べてCO2の排出量を約45%削減できる見込みだ。第2センターは再開発地域の整備が完了する2019年度までに構築する。
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