ダムの南向き斜面で太陽光発電、6900枚のパネルを並べてメガソーラーに:自然エネルギー
兵庫県の企業庁がダムの側面を利用してメガソーラーを建設した。1.9万平方メートルの広さがある南向きの斜面に太陽光パネルを設置して1.76MWの発電能力を発揮する。一般家庭で530世帯分の電力を供給することができて、20年間の売電収入は15億円を超える見込みだ。
大規模なダムには水をせき止めるための堤体(ていたい)が必要で、垂直の場合もあれば斜めに造成する方法もある。兵庫県の加古川市にある「権現(ごんげん)第1ダム」の堤体は側面が南向きで、ちょうど太陽光発電に適した22度の斜面になっている(図1)。
ダムを運営する兵庫県の企業庁が横幅350メートルの斜面いっぱいに、6900枚の太陽光パネルを設置して、11月6日に発電を開始した(図2)。斜面に平行に設置することでパネルの影の範囲が狭くなるため、平坦な場所と比べて1.2倍の密度でパネルを並べることができた。発電能力は1.76MW(メガワット)で、年間の発電量は190万kWhを見込んでいる。一般家庭で約530世帯分の電力に相当する。
発電した電力は固定価格買取制度を通じて全量を売電する方針だ。2012年度の買取価格(1kWhあたり40円、税抜き)を適用できて、年間の売電収入は約7600万円になる。買取期間の20年間の累計では15億円を超える。
発電設備の建設費は7億円強で、維持管理費などを含めても20年間の支出額は12億円以下に収まる見通しだ。20年間で3億円以上の利益を生み出して、今後の水道施設の更新や改善などに生かす。
権現ダムは加古川市の北部にある。瀬戸内海に面した南部の工業地帯に安定的に水を供給するための設備として、1981年から運転を開始した(図3)。第1から第3まで3つのダムがあって、第1ダムの規模が最も大きい。
このほかに同じ加古川市内にある「平荘(へいそう)ダム」と姫路市にある「神谷(こたに)ダム」でも、同様にダムの堤体の側面を利用した太陽光発電のプロジェクトが進んでいる。平荘ダムでは1.99MW、神谷ダムでは4.99MWの発電能力になる予定で、いずれも2015年内に運転を開始する見通しだ。
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