電気自動車の新電池、2倍に伸びる走行距離:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
日立製作所は2014年11月14日、高性能なリチウムイオン蓄電池の技術開発に成功したと発表した。電気自動車の走行可能距離を2倍に伸ばす効果があるという。出力と寿命を落とさずに蓄電池の容量を高められる点に特徴がある。2020年ごろに新技術を用いた蓄電池の実用化を目指すとした。
正極を厚く、負極をシリコンに
図2が今回開発したリチウムイオン蓄電池セルの構成だ。まず容量を増やすために正極を厚膜化し、負極の炭素系材料をシリコン系(ケイ素系)材料に変えた。リチウムイオン蓄電池の容量はリチウムイオンが正極から負極に(またその逆に)移動できる量で決まる。正極側は体積を増やすことで移動できる量を増やし、負極側は炭素系材料よりもリチウムイオンの取り込み量が多くなるシリコン系材料を用いることで、対応した。
このような「改善」を加えると、容量は増えるものの、出力と寿命が短くなる。正極側ではリチウム金属酸化物の量を増やすと同酸化物の分布が不均衡になり、リチウムイオンがうまく移動しなくなる。「移動に時間がかかること=出力の低下」だ。
そこで正極側では2つの対策を採った。1つは、3次元電極構造可視化技術を開発し、リチウムイオンの移動特性を解明、リチウム金属酸化物の分布を最適化して、移動しやすくした。
もう1つはセルへかける(印加する)電圧を高めることだ。これで充放電が可能なリチウムイオンの量が増える。しかし、印可する電圧を高めると、電解液が分解してしまう。そこで、ある種の酸化物からなる被膜を正極表面に作り上げることで、電解液の分解を抑えた。
負極側の問題点はこうだ。確かにシリコン系材料は炭素系材料よりもリチウムイオンを大量に取り込み、放出できる。このときシリコン系材料は膨張、収縮する。炭素系材料はこの膨張、収縮に強いが、シリコン系材料は違う。すぐにヒビが入り、細かく砕けてしまうのだ。
日立製作所の解決策は2つある。1つはシリコン系材料に導電性表面処理を施すこと、もう1つは強度(保持力)が高いバインダーを採用して、シリコン系粒子同士の孤立化を防いだことだ。
正極と負極に改善を加えた結果、従来の炭素系材料と同等程度の寿命を実現できるという。
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